AIに法的責任を負わせることはできるのか?

AIの発展に伴い、この先AIが原因となる何らかの問題が起きることになります。
その時、誰が責任を負うことになるのでしょうか。
将来、確実に問題となってくるAIの責任問題について、不法行為法を軸にご紹介していきます。

こんにちは!!ライターのりゅうすけです。

今回は、AIの発展に伴い個人的にも気になっていた『AIと法的責任』についての論文を紹介していきます!

将来、AI・ロボットに被害を与えられるようなことがあっても、「法整備が確立していないので対応できません」と言われても困りますよね?
その為にも、AIをどのような位置づけで使用していくのかがとても重要なんです。

目次
(1)不法行為法とは?
(2)不法行為制度の三機能とAI
  1.損害補填機能とAI
  2.抑止機能とAI
3.報復・制裁機能とAI

(3)AIに法的責任は負える?
(4)既存の法概念との比較
  1.無過失責任制度
  2.無過失補填制度
(5)まとめ

(1)不法行為法とは?

まず初めに、不法行為責任をAIに負わせるのかという本題に先立って、不法行為法がどのような制度かを説明していきます。

不法行為制度を機能別に分けてみると、損害補填機能と抑止機能、制裁機能の三つに大きく分けられます(この三機能については以下で詳しく説明します)。
これらの機能により、損害賠償という効果を上げることが出来るのが不法行為制度となります。

仮にAIが法的責任を負うことになれば、これら三機能によって得られる効果を人と同じように受けられる体制でなければいけません。
以下では、AIに法的責任を課そうとした際に、不正行為制度が機能するのかを考えていきます!

(2)不法行為制度の三機能とAI

1.損害補填機能とAI

損害補填機能とは、不法行為法制度の目的が権利保護であり、それが損害補填によって実現されるという点を踏まえ、被害者が受けた損害を金銭賠償によって不法行為がなかった時の状態に回復・救済します。

この損害補填機能をAI・ロボットに適用すると、AI・ロボット独自に賠償資力を持つことが必須条件となります。
掘り下げていくと、AI・ロボットに財産権を与え、責任を負えるよう法的人格を有する必要があります。とすると、当初の課題であった『誰が責任を負うのか?』についての一つの解決策となります。

2.抑止機能とAI

抑止機能とは、賠償金が加害者の負担になることで、それを避けようとする行動に繋がることを指します。

この抑止機能をAI・ロボットに適用すると、仮にAI・ロボットが財産権を持っていたとするならば、その財産を失う可能性があることが抑止効果に繋がります。しかし、私たち人間と同じように保険や社会保障などの適用も認められれば、その効果は期待できません。

3.報復・制裁機能とAI

報復・制裁機能とは、日本においては慰謝料の枠組みとして考えられています。
この機能に賛成・反対と未だに議論がなされていますが、被害者側は加害者から慰謝料などの償いを受けることで、一定の満足感を得られることもあります。

この報復・制裁機能をAI・ロボットに適用すると、人間と同じ満足感を得ることは出来ません。それは、AI・ロボットが肉体的・精神的苦痛を感じない存在だからである。

(3)AIに法的責任は負える?

当初の課題であった『AIが法的責任を負うことはできるのか』は、AI・ロボットに財産権や法的人格があった場合に、不透明であった責任の所在をはっきりさせることができます。

しかし、法的人格を持ったAI・ロボットが損害補填機能を適用することはできるが、実際に損害補填が行われるかというとそうではない。それは、不法行為となる成立要件を説明することが非常に困難だからです。

機能が働くかについては問題ないが、実際に損害を補填するとなると説明できないのが現状です。

(4)既存の法概念との比較

ここまで、AI・ロボットに法的責任を負わせるに至るまでには、厳しい条件があることが分かりました。次では、私たちの社会制度と比較して考えていきます。

1.無過失責任制度*1

無過失責任制度の代表として挙げられるのが、製造物責任法や自賠責保険法である。この無過失責任制度では、危険責任や欠陥責任を問われるが、AI・ロボットに関してもその責任は問われて来ます。

ここで問題になってくるのが、AI・ロボットの所有が負のインセンティブを生じさせることがあります。
ただ、AI・ロボットの責任は使用用途によって変えていこうといった改善案によって担保していくべきでもあります。

しかし、製造物責任法に関しては有体物のみが対象となってるので、そもそも制度上問うことができないのが現状です。

2.無過失補填制度*2

無過失補填制度の代表例として挙げられるのが、産科医療保障制度です。これは、出産時の脳障害に関する制度で、被害者救済に特化した制度です。

前述している抑止機能や報復機能とは真逆の制度体制であり、この制度に関しても賛否両論あるのは事実ですが、手厚い被害者保護が可能になったのもまた事実です。

この制度をAI・ロボットが事故を起こした際に適用したとすると、不法行為法の損害補填機能よりも被害者救済という点で優れています。

(5)まとめ

ここまで、『AIが法的責任を負うことができるのか』という疑問を、様々な観点から検討してきました。

一見、『誰が責任を取るのか』という問いに対しては、解決したように見えた。しかし結論としては、AIに法的責任を負わせることが難しいことが分かり、多くの問題を突破していかなくてはいけない。

今回、実用的な解決策を出すことが出来ませんでした。
しかし近い将来AIの発展に伴い、この問題がより重要になってくることが予想されます。

事故が起きる前に、法整備を進めることの重要性が少しでもご理解いただけましたでしょうか。官民連携で、ルール決めも進めていきたいところですね。

 

*1無過失責任:不法行為において損害が生じた場合、加害者がその行為について故意・過失が無くても、損害賠償の責任を負うということ。

*2無過失保障:一般に、加害者の存在の有無に関わらず、事故被害者に対して補償すること。

 

A study on legal personhood of AIs in tort law .Ryota AKASAKA. National Institute of Advanced Industrial Science and Technology .

Abstract
This article examines a notion of legal personhood of AIs in tort law. Tort law has three functions, and the notion hardly satisfy these functions.

 

ライター:株式会社wevnal ChatbotAI事業部 山本隆介