アルツハイマーの発症に関係するアミロイドを機械学習によって推定。早期発見を可能に。

最近の研究によりアルツハイマー病は、発症よりかなり早い段階でアミロイドベータと呼ばれるペプチドが変化する事が分かっています。この髄液中のペプチド濃度を機械学習を用いて血液から推測することにより、アルツハイマーの発症リスクを調べることが可能になりました。

【論文】:A blood-based signature of cerebrospinal fluid Aβ1–42 status

アルツハイマーと髄液中のペプチド濃度の関係

アルツハイマー病は、効果的な治療が発見されていない疾患の一つですが、いち早く薬の投与をする事で完全に治癒しないまでも、進行をくい止める事は可能です。

しかし、大半の患者は、発見時すでに後期段階にあり、補償できないレベルの脳組織喪失をしています。治療を有効なものにするためには、回復できないほど脳組織がダメージを受ける前の早期段階で発見する事が重要です。

一方、最近の研究では、アルツハイマー病はその発症よりもずっと早い段階でアミロイドと呼ばれるペプチドが変化することがわかっており、アミロイドが脳に蓄積し、 神経細胞に障害を与えることが原因で発症するともいわれています。

この変化は10年前に観察される可能性もあり、すなわち、髄液中のペプチド濃度を調べれば、記憶障害が引き起こされる10も前にその発症リスクを調べることが可能なのです。

しかし現在個々のアミロイド濃度を測定するための確立された方法は現在ありません。例えば、直接髄液から採取する方法では人体に侵襲的な方法をとる必要があり、膨大なコストもかかってしまいます。

この研究では、機械学習によるアプローチを採用して、個人の髄液のアミロイドの濃度を安価で低侵襲的に推定できる血液ベースのシステムを開発しました。 論文では、機械学習を用いて、髄液中のアミロイド濃度に関連する、血液中のタンパク質を血液検査から同定することで、最大77%の精度で将来的なアルツハイマーのリスクを予測できるとしています。

髄液中のペプチド濃度を機械学習により同定

本研究では、髄液のアミロイドの濃度を予測することが目的ですが、実際に、何百もの検体を測定することは費用がかかります。これを踏まえ、高い予測性能をもたらす測定のタイプを探るとこから始めました。

1、最初に、ランダムフォレスト法を用いて、モデル性能の測定と異なる入力方式の重要性の評価をします。モデルは、回帰タスクが感度と特異性の間のトレードオフの変化が一番低いことが判明。入力方式は、年齢、APOEε4(ApoE遺伝子の一種)、キャリア、タンパク質を用いた場合に、髄液のアミロノイドの正常/異常状態が、それぞれ高い感度、異度で予測できることを示しました。

2、異なるモデルと、入力モダリティの影響を評価した後、高い予測性能を達成するために必要な最小限の機能セット(バイオマーカー)を決定します。モデリングの改良により、APOEε4、仕事のキャリア、四つのたんぱく質が高精度を達成するのに必要であることが分かりました。特にキャリア状態は、高い感度、および特異性を示していたとのこと。

3、そして、最後に、コホートで検証し、これらの予測モデルの頑健性と有用性を評価するという流れになっています。

この結果、異常な濃度を有する被験者は、正常な濃度を有する被験者よりも認知力低下率が速い(アルツハイマー診断への移行が速い)ことが分かりました。さらに、軽度の認知障害患者に適用した場合、異常な濃度を持つ被験者のアルツハイマー発症確率は従来のおよそ2.5倍にもなったとのこと。

アミロイドを予測する血液ベースのバイオマーカーは、癌、心血管疾患、および感染症においても有効で、多段階スクリーニング手順のステップとして役立つとも述べられています。

AI-SCHOLARの過去記事でも紹介した通り、機械学習を用いてアルツハイマーを推測するという研究は前からありましたが、機械学習による予測は一般的に、脳に起こる代謝のわずかな変化を画像から捉えるというものが多く見受けられます。本研究は、髄液中のアミロイドに関連する、血液中のたんぱく質を同定し予測を行うという点でかなり興味深い内容となっております。