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高速かつ安全な生体認証:肌パッチベースの顔認証アンチスプーフィング手法

高速かつ安全な生体認証:肌パッチベースの顔認証アンチスプーフィング手法

Face Recognition

3つの要点
✔️ 顔画像全体ではなく、肌のパッチのみを使用した顔の偽造防止手法を提案
✔️ 機密情報が送信または保存されないため、暗号化と復号化の必要がなく、処理プロセス全体の速度が大幅に向上
✔️ Androidデバイスでデモを行い、100ms未満のレイテンシーで偽造攻撃を正確に検出

Enhancing Mobile Privacy and Security: A Face Skin Patch-Based Anti-Spoofing Approach
written by Qiushi Guo
(Submitted on 9 Aug 2023)
Comments: Published on arxiv.
Subjects: Computer Vision and Pattern Recognition (cs.CV)

code:  

本記事で使用している画像は論文中のもの、紹介スライドのもの、またはそれを参考に作成したものを使用しております。  

概要

ディープラーニングの進歩によって、オンライン本人確認(eKYC)、電子機器のセキュアログインなど多くの分野で顔認識技術が使われるようになりました。顔認証は、生体認証技術であり、高いセキュリティが求められています。近年、顔認識技術の信頼性を向上させるために、顔のアンチスプーフィング(Face Anti-Spoofing / FAS)が導入されています。しかしながら、既存の手法には、実用において、いくつかの問題があります。複数のコンポーネントを統合するサーバーサイドでFASモデルを展開するには、プライバシーやセキュリティに関する懸念があります。ユーザーの顔画像がネットワークを通じて送信され、サーバーに保存されることで、プライバシーが侵害されるリスクが高くなります。また、画像の送信プロセスは、時間がかかり、ユーザー体験が損なわれてしまいます。

この論文では、これらの問題に対処するために、顔画像の肌のパッチを使用する新しい顔のアンチスプーフィング(FAS)モデルを提案しています。従来の方法では、顔画像全体をサーバーに送信するため、プライバシーを侵害されるリスクがありましたが、提案するモデルでは、肌の特定の領域のみをサーバーに送信します。また、従来の手法では、送信する画像の暗号化と復号化に、処理時間の大半を費やしていましたが、提案するモデルでは、肌のパッチのみを送信するため、個人を特定する情報が含まれず、画像の暗号化と復号化の必要がなくなります。

新しい手法の効果と堅牢性を評価するため、精度と遅延を含むさまざまな観点から実験を行った結果、高い精度で偽造を検出しながら、低いレイテンシーを維持することがわかりました。Androidデバイスでデモを行い、100ms未満のレイテンシーで偽造攻撃を正確に検出しています。

提案手法

上述のように、従来の顔のアンチスプーフィングにおける主なリスクは、画像の送信と保存のプロセスに起因しています。例えば、あるモデルでは、暗号化と復号化に約240ミリ秒を費やしますが、主要機能である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の推論には、わずか20ミリ秒しか要していません。顔画像全体を送信することは大幅なレイテンシーを引き起こす上に、データを保存するため、プライバシーの懸念があります。

従来の研究では、顔のアンチスプーフィングのアプリケーションで、顔画像の構造とテクスチャを分離する方法を検証しています。パッチベースの顔の偽造検出アルゴリズムには、主に2つのアプローチがあります。下図のように、一つは、特定の顔の特徴(目、鼻、口など)のパッチ画像を入力特徴として抽出することです。もう一つは、顔を複数のサブパッチを分割して入力特徴として抽出する方法です。しかし、これらのアプローチはどちらもプライバシーのリスクがあります。さらに、1つ目のアプローチは、顔のパーツごとに4つの異なるモデルの使用を必要とし、かなりの計算負荷を課す可能性があります。

従来の研究で、顔のパッチが、さまざまなディープラーニングの分類タスクの入力として効果的に利用できることは示されているため、顔の肌のパッチも、顔のアンチスプーフィングに対して適用可能ではないのか、という仮説の元に、この研究が行われています。

この研究では、次のような方法を提案しています。

顔認証のアンチスプーフィングを本物の顔と偽物の顔を識別する分類タスクとして定義しています。画像からこれを判断するモデルを設計し、特定の閾値を使って本物か偽物かを決定します。次に、このモデルを訓練するためには多くの顔画像データが必要です。この論文では、CelebASpoofingという大量で高品質な画像データセットを使用しています。各イテレーションで、RetinaFaceが元の画像から顔領域を切り取るために使用されています。その後、切り取られた顔画像は、顔のランドマークを取得するためにfacemeshモデルに入力されます。これらのランドマークは、顔の特徴と重ならない肌のパッチを特定するために使用されます。個人を特定できる情報を含まないよう肌のパッチを抽出しています。最終的に、本物のサンプルとさまざまなタイプの攻撃インスタンスを含む10,000以上のパッチを収集しています。また、顔画像から顔のパッチを抽出するために、私たちはPatch-Extracted Module(PEM)と呼ばれる手法を用いています。PEMでは、facemeshモデルによってガイドされた顔のランドマーク検出を利用して、入力された顔画像上のランドマークを特定しています。その後、顔画像を整列し、高品質な顔のパッチを抽出しています。候補領域の選択では、顕著な顔の特徴を欠いている、特に左頬、右頬、および、あごの領域に焦点を当てています。抽出されたパッチから特徴を抽出するために、CNNを使用しています。このモデルは、2つの異なるパッチを組み合わせて、より正確な判断を行うことができます。

実験

顔のアンチスプーフィングにおけるモデルの性能を評価するために、3つの指標が使用されています。Attack Presentation Classification Error Rate (APCER)、Bonafide Presentation Classification Error Rate (BPCER)、Average Classification Error Rate (ACER)です。これらの指標は以下のように計算されます。

  • APCER = FP / (TN + TP)
  • BPCER = FN / (FN + TP)
  • ACER = (APCER + BPCER) / 2

なお、TP(True Positive)は、偽物の顔画像を正しく偽物と分類したもの、TN(True Negative)は、本物の顔画像を正しく本物と分類したもの、FP(False Positive)は、本物の顔画像を誤って偽物と分類したもの、FN(False Negative)は、偽物の顔画像を誤って本物と分類したものを表しています。

提案手法の性能評価においては、テストデータセットとして、Rose-Youtu、MSU、Mobile-Replayの3つのデータセットが用いられています。結果は下表のようになっています。提案モデルは、3つの異なるデータセットに対して、様々なアルゴリズムと比較して顕著な性能を示しています。特に、CDCは、全てのデータセットにおいて最高のパフォーマンスを発揮しますが、この論文で紹介しているモデルは、CDCと比較して軽量であり、バックエンドのインフラストラクチャーへの展開に非常に便利で実用的と言えます。

さらに、提案モデルは、FaceDsやFASNetなどの最先端のモデルと比較して同等の結果を達成し、LBPやColor Textureのような従来のアルゴリズムのパフォーマンスを大幅に上回っています。この結果は、提案モデルが顔のアンチスプーフィングの課題に対処する効果があることが示されています。

さらに、レイテンシーについても実験しています。アンチスプーフィングの処理時間には、画像の送信、暗号化および復号化、モデル推論が含まれています。従来のモデル(resnet34)と提案モデル(two streams resnet34)のレイテンシーを評価し、結果は下表のようになっています。

提案モデルの送信および推論時間は従来のモデルよりわずかに大きいですが、全体のレイテンシーは従来のモデルのわずか28%程度に抑えられています。暗号化および復号化コンポーネントを省略することで、全体のプロセスが速くなっています。

まとめ

この論文では、顔の肌のパッチを入力特徴として利用する新しい顔のアンチスプーフィングのモデルを提案しています。この手法では、顔画像を送信しないため、顔画像の暗号化と復号化も必要ありません。従来の方法と比較して、個人情報漏洩のリスクを無くし、アンチスプーフィング処理の時間を約4分の1まで大幅に削減することに成功しています。

[使用画像の出典]
・RBB TODAY 「白石麻衣、『セクシーな方が好き』理想の結婚相手やプロポーズ明かす 1枚目の写真・画像」 2021年5月20日、https://www.rbbtoday.com/article/img/2021/05/20/188830/700078.html。
・TOKYO HEADLINE 「白石麻衣『免許を取って大きなスーパーに行きたい』」 2021年12月12日、https://www.tokyoheadline.com/587349/。

 

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インターネット広告企業(DSP、DMP etc)や機械学習スタートアップで、プロジェクトマネージャー/プロダクトマネージャー、リサーチャーとして働き、現在はIT企業で新規事業のプロダクトマネージャーをしています。データや機械学習を活用したサービス企画や、機械学習・数学関連のセミナー講師なども行っています。

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