脳波画像を畳み込みニューラルネットワークで解析、てんかん発作の自動検出が可能に
東京大学らによる研究グループは、脳波からてんかん発作を自動検出できる人工知能の開発に成功しました。脳波データを脳波計の画面に出力されるような画像に変換し、これらの無数の画像を人工知能に学習させています。
脳波データを解析して、てんかん発作を自動検出
「てんかん発作」とは脳の一部が異常で過剰な活動を起こすことで、突然痙攣を生じたり、意識を失ったりする病気です。その原因や症状は人により様々で、乳幼児から高齢者までどの年齢層でも発病する可能性があり、患者数も1000人に5人~8人(日本全体で60万~100万人)と、誰もがかかる可能性のあるありふれた病気のひとつです。
てんかんの診断には、脳波検査が欠かせませんが、これらの診断は、てんかん専門医の専門知識と経験に加え、膨大な検査データの精査に長時間を要する大変な作業でした。このような診断の負担軽減のためにも、脳波からてんかん発作を自動検出できる手法が強く求められていました。
てんかん発作を自動検出することを目的とした従来研究では、脳波を時系列データとして扱い、時間周波数解析や非線形解析が試みられていましたが、てんかん発作の脳波の特徴は患者ごとに異なるため、どの患者でも使える統一的な手法は実現されていませんでした。
また、数回に渡り脳波検査を実施したとしても、その検査データに含まれるてんかん発作の脳波は高々数分程度と限られていました。したがって、てんかん発作の脳波の特徴を人工知能に学習させようとしても、訓練データが足りないという問題点がありました。
時系列データーを画像に変換
そこで、同社はてんかん専門医が脳波を精査するとき、脳波を時系列データとして数理的に解析しているわけではなく、自らの経験に基づいて、脳波計の画像の特徴から「視覚的に」判断していたことに着目。
そして、従来の研究のように脳波を時系列データとして扱うのではなく、脳波データを脳波計の画面に出力されるような画像に変換し、これらの無数の画像を人工知能に学習させることを試みました。
ビデオ脳波モニタリング検査を実施した24名から得た合計1124.3時間の脳波データを解析対象にしました。これらの検査データから作成した脳波画像を深層畳み込みニューラルネットワークに学習させたところ検査精度は74%で、市販のソフトウエアにおける既存手法(20%〜30)を大きく上回ったとのこと。研究成果は「NeuroImage:Clinical」にも掲載されています。
今後の展望
今後、さまざまな脳波データを集積すれば、専門的な知識と経験を備えたてんかん専門医に勝るとも劣らないてんかん発作を検出できる人工知能の開発の可能性が示されました。
将来的には、てんかん専門医が不足する地域でも、本手法により専門的な脳波診断を提供できるようになると期待されます。
また、時系列データを画像に変換したうえで画像認識技術を適用する手法は、てんかん発作以外の脳波診断や生体信号解析をはじめ、さまざまな用途への応用なども考えられます。
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