改善困難な疾患である慢性腎疾患を早期発見!深層学習によるバイオマーカーの同定手法を提案
3つの要点
✔️ 症状のないまま不可逆的に進行する 慢性腎疾患(CKD)の早期発見の実現が必要
✔️ ニューラルネットワークを用いて、生体代謝物(メタボローム)を抽出
✔️ CKD ステージ別データセットから初期段階における代謝物を同定し、早期発見に貢献
Machine learning distilled metabolite biomarkers for early stage renal injury
written by Yan Guo, Hui Yu, Danqian Chen Ying-Yong Zhao
(Submitted on 05 Dec 2019)
Comments: Published by Metabolomics volume 16, Article number: 4 (2020)
Subjects: Machine Learning (cs.LG); Machine Learning (stat.ML)
背景
ここでは、本研究で取り扱われている「慢性腎疾患(CKD)」を概説した後、研究のポイントについて述べていきます。
慢性腎疾患をする前に、そもそも、「腎臓」という臓器にどのような働きがあるのかを簡単に解説したいと思います。
腎臓は背中の中央付近にある臓器で、背骨を挟んで、二つあります。主な役割は、体の中の不要物と必要なものを分け、尿を作り出すことです。腎臓は身体の中で、唯一こうした役割を持ち、心臓から送り出される血液の 1/4 が流れ込み、糸球体と呼ばれる、毛細血管の集合体で濾過されます。
もう少し詳しく解説すると、腎機能は、糸球体における「濾過機能」とそれに続く尿細管という場所での「再吸収機能」の二つがあります。つまり、腎臓では、まず、ざっくりと大きな分子(タンパク質、赤血球等)だけを残すように濾過し、その後、必要なもの(水分・電解質)を尿細管にて再吸収するといった2段階の機能で構成されています。そのため、疾患によって、濾過機能と再吸収昨日のどちらが悪いかを特定する必要があります。
ここで、慢性腎疾患(Chronic kidney diseases) について解説していきます。この疾患は、主に、糖尿病、高血圧、慢性腎炎を代表とする腎機能が慢性的に低下してしまう病気の総称のことを指します。特に、近年では、糖尿病と高血圧による慢性腎疾患の報告が増加していると報告されています。こうした疾患の特徴として、血糖や LDL といった動脈硬化のリスク因子の増加により、血管系疾患によって腎機能が低下するといったことが挙げられます。つまり、生活習慣による血管機能の低下により、毛細血管の塊である糸球体の機能が低下し、腎機能が低下するといった家庭が推察されます。
一般的に、CKD は初期症状では無症状であり、自覚することが困難です。また、腎機能は一度悪化すると、再び改善することは現状として困難であり、早い段階で見つけて、治療を開始することが大切になります。そのため、本研究の種子にもあるようにCKD においては、「早期発見」がキーワードとなります。また、CKD は「心腎連関・脳腎連関」という言葉があるように、心血管疾患や脳血管疾患を引き起こす最大のリスクファクターという指摘もされています。こうした状況もあり、無症状の状態でいかに見つけ出すかという点が大切になります。
本研究では、慢性腎疾患(CKD)の早期発見を目的に血漿中における代謝産物(メタボローム)のレベルの変化と CKD の進行が関連しているという仮説の検証を行っています。代謝物質は、こうした疾患の影響に対して比較的、感度が高く、また、従来のバイオマーカーでは特に初期ステージの検出が困難であったため、本研究の成果によって、メタボロミクスを用いて早期発見が実現できる可能性があります。
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