データサイエンティストさんっ! 育成ですよ、育成!

IT業界だけでなく様々な業種業界で需要の高まる「データサイエンティスト」ですが、優秀な人材は東京ドームでコンサートが出来るアイドル並に希少です。
ココらへんは地下アイドルと同じく「名乗ったもの勝ち」な側面もあり、全く役に立たない”自称”データサイエンティストも存在します。
「優秀なデータサイエンティストをどう確保するか」という課題に向き合う事ことが、今回の趣旨となります。

ここでデータサイエンティスト不足に悩む、弊社の状況をまとめてみました。

・都内のAIベンチャー
・設立数年なので知名度はまだ低い
・今年になって取引先や案件が増えてきた
・社員数は20人いない程度でエンジニア中心
・可能であれば他社で実績や経験のある即戦力を採用したい
・社内データサイエンティストのOJTによる育成も検討
・給料はそんなに高くない
・毎日Kaggleだけできる余裕はない(会社としてKaggleを含めた自己研鑽は推奨)

まずデータサイエンティストの育成と採用方法としては、下記が考えられます。

・人材紹介会社
・転職サイト
・ヘッドハント
・社内人材の転換
・新卒採用
・中途採用者を育成
・インターンを育成

弊社でも上記方法を試しており、過程と結果を確認しながら掘り下げてみます。
今後データサイエンティストの採用と育成を検討する会社でも、参考にして下さい。

データサイエンティストの最適な育成と採用方法とは

 

⬛️人材紹介会社を使う

エージェントを利用して転職者を紹介してもらうサービスです。
「希望者に近い人材を紹介してもらえる」「紹介料など一定の費用がかかる」点が特徴です。
一般的な職種であれば問題ないのですが、まだまだデータサイエンティストは認知度が低いので支障もあります。
例えば、人事担当とエージェントのやり取りで、こんなことがありました。

人事「データサイエンティストはプログラミングや統計や数学が出来て~(求める人材の紹介)」
エージェント「わかりました」

~後日~

エージェント「金融機関の基幹システム開発を経験した人材です。Javaのプログラミングはバッチリです」
人事「いや、そうじゃない。プログラミング言語だとPythonとか(再度説明)」

~後日~

エージェント「Pythonは出来ませんが、Rubyが出来る人を紹介します」
人事「まずテメェは仕事をしろ」

どうやら経験の浅い担当者らしく、求める人材が噛み合わずに打ち切りました。
ここまで酷い例は少ないにせよ、ITに馴染みのない人にデータサイエンティストを理解してもらうのは結構手間です。
IT業界に特化した転職エージェントなら、結果も変わってくるかと思いますが。

結果:失敗

 

⬛️転職サイトを使う

今度は求人広告を掲載して、応募を待ちます。
幅広く求人を募集できるのがメリットですが、必ずしも求める人材が応募してくるとは限りません。
先月まで焼き鳥屋の店長だった人が、何を思ったかデータサイエンティストとして応募してくる可能性も、そこそこあります。
しかし、彼が世界に通じるデータサイエンティストになれる逸材である可能性も、素粒子レベルで存在するのです。
人生は常にチャンスに溢れています!可能性に賭けてみませんか?
なお、弊社は0.02秒で不採用通知を送りました。

結果:失敗

 
⬛️ヘッドハントをしてみる

採用が進まぬ状況を見かねたのか、どこからか声が聞こえました。
「You!誰かに頼んだり、待っていてはダメだよ。チャンスはYouが掴み取るんだZE!」と。
そうです、データサイエンティストもアイドルも、自分から夢を掴み取ってこそ夢が叶う!
そしてジョニーさん(仮)の言葉に従って準備を始めた時に気付きました、「そんな金はない」と。
子供の頃に言われた「よそはよそ、うちはうち」という母の言葉を思い出し、他の方法で人材を確保する事になりました。

結果:失敗

 

⬛️新卒採用も試してみる

情報感度が高いのか、よほどの変わり者なのか、たまたま見つけたのか、知名度の低い弊社に新卒採用で応募する度胸ある学生がいました。
無事に4月から入社してもらい、日々成長しています。
しかし運が良かっただけなので、来年も継続して新卒採用できるかは全くの未知数です。

結果:運が良かった

 

⬛️社内人材の転換は?

弊社は様々な経歴の社員がおり、ITエンジニアですがデータサイエンティストではない人材もいます。
プログラミングなどの素養は持ち合わせており、学習意欲も高いので、業務を経験しながら職種転換できると判断しました。
徐々に慣れたとはいえ、専門知識なども必要なので、まだ独り立ちはできません。
最近はじめた取り組みなのでまだ目立った成果はでていませんが、明るい見通しは立っています。
時間と手間はかかりますが、良い方法かもしれません。

結果:試行錯誤中

 

⬛️中途採用者を育成 

データサイエンティストに必要な素養(プログラミング・統計・数学・英語など)を持つ人を中途採用し、実務を学びながら実力を身に付けてもらいます。
ここで重要なのは、「即戦力」ではなく「なれそうな人」の採用を前提としたことです。
知名度の低い弊社で即戦力は採用できないので、時間と手間を掛けても育成する方針としました。
一定の素養があれば、実務を経験しながらデータサイエンティストとして活躍できますし、これまでの職務経験も様々な形で活かすことができます。
中途採用者が他メンバーの足りない部分を補完したり、これまで扱えなかった案件で活躍したりと、会社で扱う仕事の幅も広がりました。
一見遠回りですが、実は近道な育成方法と判断しています。

結果:成功

 

⬛️インターンを育成

ここ数年は学生にもデータサイエンティストが認知されており、インターンへの応募が増えてきました。
単なる興味本位ではなく在学中から勉強している生徒であれば、実務に携わるなど現場の業務も体験しています。
大事なのはインターンを下働き扱いせず、メンバーの一人として責任ある仕事も任せることです。
こうすることで、会社と仕事を関心を持ってもらう点を重視しました。
そのまま会社と仕事が気に入って入社し、新卒段階からデータサイエンティスト(見習い)として活躍できるようになりました。
もっとも、好待遇な有名ベンチャーや知名度のある大企業にインターンする学生も多く、知名度が低いければ人材確保が難しい点は変わりません。

結果:成功

データサイエンティストは地道に育成するのがベスト

ここまで読めば分かる通り、データサイエンティストは地道に育成するしかなく、「急がば回れ」という結果になりました。
人材紹介会社のCMのように「即戦力をすぐに採用」は理想であり、人材が枯渇するデータサイエンティストであればなおさらです。
現実を見れば、手間と時間をかけて素養のある人材を育てるしかありません。
知名度が低かったり規模が小さい会社では、即戦力の採用は難しいため、育成を優先したほうがいいでしょう。

なお、本件は知名度の低いベンチャー企業における事例であり、退職エントリーの最後によく名前が挙がる「メル~社」などは、事情も異なります。
有名企業であればエージェントや転職サイトを通じて有望な人材も集まりますし、自社開催による採用セミナーなども可能でしょう。
我々もメル~社やWWEのように、破格の好待遇で人材を集められる存在になりたいものです。

また、今回は行っていませんが、人材獲得の方法として「自社社員の紹介制度(報奨金を支給)」「大学や研究室から学生を紹介」という方法も考えられます。
人脈やコミュ力に自信のある会社で、検討してはいかがでしょうか。

ここで一つ疑問が出てきます。

 

TJOさん……私もその答えを知りたいです。

「素質」については会社が求めるスキル、担当する業務や業界、目的や対象となるデータなど、様々な要因が重なります。
データサイエンティストと言っても、広告の効果測定と製造装置の故障予測では求められる能力は異なります。
この点に関しては、一般論としてデータサイエンティストに求められる資質以上には何とも言えません。

このように人材育成には不確定な要素も多分に含まれます。
では、知名度や待遇面で有利な有名なベンチャーや大企業であれば、時間がかかり不確定要素のある育成ではなく、他社から優秀な人材をヘッドハントすればいいのでしょうか?
仮に実績あるデータサイエンティストが入社しても、成功を収めるとは限りません。
素質と実績はあったものの、角界を追放されてプロレスデビューした元横綱・北尾光司は、高田延彦のハイキックでKO負けした瞬間に観客は大喜びでした。
あなたの会社に北尾光司が入社したらどうなるか?今一度考え直してみましょう。
やはりデータサイエンティストも実力だけでなく、性格などの内面や会社の方針、カルチャーに合うかどうかが重要です。
そして社内に人材を育成出来る環境があるか見直しましょう。
いつの時代もエースになれるのは、かつてのヤングライオンなのです。

データサイエンティスト育成に必要な環境の一例を挙げてみます。

・最新のPC(Mac可)、高性能GPU、デュアルモニタなどのハード環境。
・ネットによる情報収集やクラウドサービスが自由に利用できる。
・技術書の購入や有料トレーニング参加など、自己研鑽の補助制度。
・平日かつ日中のセミナーやカンファレンスに気軽に参加できる。
・IT部門におけるデータ提供などの協力体制。
・直属の上司などを社内の橋渡し役として配置。
・社内におけるデータサイエンティストの仕事に対する理解。
・メンターとなる先輩データサイエンティスト(←重要)

「よーし、パパの会社もデータサイエンティスト育成しちゃうぞ」と意気込んで採用だけしても、環境が揃わなければ人は育ちません。
ロンリーデータサイエンティストに「我が社の期待の星だ!」と励ましても効果はなく、宴会芸や社内調整をやらせれば三ヶ月後に失踪するでしょう。

それでは、データサイエンティストの採用と育成についてまとめます。

・まとめ

都合よく即戦力を採用するのは無理(ただし「メル~社」は除く)。
試行錯誤しながら人材を育成するのが、遠回りだけど近道。
採用活動を始める前に、社内の育成環境を整えよう。

あなたの会社で、すぐにデータサイエンティストが活躍することはありません。
「データサイエンティストは一日にして成らず」を肝に銘じましょう。

 

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