
OnGoal: LLM対話の目標を可視化する新しいチャットインターフェース
3つの要点
✔️ OnGoalは、LLM対話における利用者の目標を推論・統合・評価し、可視化するインターフェース
✔️ 目標達成状況を色分けやタイムラインで表示し、長い会話でも進捗を把握しやすくする
✔️ 20名の実験で、OnGoal利用者は認知的負担を軽減しつつ、柔軟な対話戦略を取る傾向が確認
OnGoal: Tracking and Visualizing Conversational Goals in Multi-Turn Dialogue with Large Language Models
written by Adam Coscia, Shunan Guo, Eunyee Koh, Alex Endert
(Submitted on 28 Aug 2025)
Comments: Accepted to UIST 2025. 18 pages, 9 figures, 2 tables. For a demo video, see this https URL
Subjects:Human-Computer Interaction (cs.HC); Artificial Intelligence (cs.AI); Machine Learning (cs.LG)
概要
近年、LLMとの対話は、多数のやり取りを重ねながら目的を達成する「マルチターン型」へと拡大しています。
しかし、長く複雑な会話が続くと、利用者は自らの会話上の目標を見失いやすくなり、達成状況を確認したり、進捗を整理したりすることが困難に。
特に、目標が途中で変化したり、複数の要望が重なったりすると、どの要望が満たされ、どれが無視されているのか把握するのが難しいという課題があるとのこと。
こうした背景を踏まえ、本研究では「OnGoal」という新しいチャットインターフェースが提案されました。
OnGoalは、利用者の目標をリアルタイムで追跡・可視化し、どの応答がどの目標に対応しているのかを明示します。
さらに、進捗を要約表示するパネルや、目標ごとの詳細な評価表示などを備えることで、長大な会話における認知的負担を軽減。
20名を対象としたユーザ実験により、OnGoalは従来型のチャットに比べ、目標管理の効率性を高め、利用者が新しい対話戦略を取り入れる契機を与えることが確認されました。
提案手法
OnGoalの中核は「ゴールパイプライン」と呼ばれる三段階の処理です。
第一段階の「推論」では、利用者の発話から質問・依頼・提案・申し出といった会話目標を抽出。
第二段階の「統合」では、新旧の目標を比較し、類似するものを結合、矛盾するものを置換、固有のものを保持するといった整理を行います。
第三段階の「評価」では、生成されたLLM応答が各目標を満たしたか、無視したか、矛盾したかを判定し、その理由と証拠となる文章断片を提示。
このパイプライン処理は対話用LLMとは独立して動作し、透明性の高い説明を提供します。
UI面では、チャット欄内に目標達成状況を色分け表示する「ゴールグリフ」、履歴を時系列で示す「タイムライン」、目標ごとの詳細履歴を確認できる「個別ビュー」が用意されています。
さらにテキストハイライト機能を組み合わせることで、LLMが目標に沿った部分や逸脱した部分を即座に把握可能。
こうした工夫により、利用者は従来の線形チャット体験を保ちながら、目標管理を視覚的かつ効率的に行える仕組みとなっています。
実験
有効性の検証として、20名の参加者を対象にした比較実験が行われました。
参加者は二つの条件に分かれ、一方は従来型のチャットインターフェースを使用し、もう一方はOnGoalを使用。
課題は「二人の上司の異なる執筆要望を同時に満たす記事を作成する」というライティングタスクです。
各上司は文体・説得力・比喩表現に関する三つの具体的目標を提示し、参加者はLLMを用いて記事を生成しながら、進捗を評価・確認するよう求められました。
分析の結果、OnGoal利用者は目標の達成状況を確認する時間が増えた一方で、文章を読み込む負担は減少し、総合的に認知的努力を軽減できたと報告。
また、OnGoalの可視化や説明機能により、参加者は従来よりも柔軟に目標伝達方法を工夫し、誤解を解消する新しい戦略を試みました。
一方、評価結果が直感と異なる場合には混乱を招くこともあり、評価プロセスの改善が今後の課題とされています。
全体として、OnGoalは目標管理の効率化に寄与し、ユーザが対話を能動的にコントロールできる可能性を示しました。
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