腎機能低下を48時間前に予測する深層学習モデルをGoogle が提案!本当ですか?
3つの要点
✔️ 深層学習を用いた 急性腎臓疾患(AKI)の早期予測モデルの提案
✔️ 172の入院患者と1,062の外来患者サイトにまたがる703,782人の電子医療記録を利用
✔️ すべての急性腎障害の予測精度として、90.2%、リードタイムとして最大48時間を達成
A clinically applicable approach to continuous prediction of future acute kidney injury
written by Nenad Tomašev, Xavier Glorot, Jack W. Rae, Michal Zielinski, Harry Askham, Andre Saraiva, Anne Mottram, Clemens Meyer, Suman Ravuri, Ivan Protsyuk, Alistair Connell, Cían O. Hughes, Alan Karthikesalingam, Julien Cornebise, Hugh Montgomery,Geraint Rees, Chris Laing, Clifton R. Baker, Kelly Peterson, Ruth Reeves, Demis Hassabis, Dominic King, Mustafa Suleyman, Trevor Back, Christopher Nielson, Joseph R. Ledsam & Shakir Mohamed
(Submitted on 31 July 2019)
Comments: Published by Nature volume 572, pages116–119.
Subjects: Machine Learning (cs.LG); Machine Learning (stat.ML)
背景
ここでは、本研究で取り扱われている「急性腎障害(Acute Kidney Injure)」を概説した後、研究のポイントについて述べていきます。
急性腎障害(AKI)とは?
慢性腎疾患をする前に、そもそも、「腎臓」という臓器にどのような働きがあるのかを簡単に解説したいと思います。
腎臓は背中の中央付近にある臓器で、背骨を挟んで、二つあります。腎臓の主な役割は、体の中の不要物と必要なものを分け、尿を作り出すことです。心臓から送り出される血液の 1/4 が流れ込み、糸球体と呼ばれる、毛細血管の集合体で濾過され、不要物とそうでないものが分離されます。
より具体的には、糸球体における「濾過機能」とそれに続く尿細管という場所での「再吸収機能」の二つがあります。流れてきた血液に対して、まず、ざっくりと大きな分子(タンパク質、赤血球等)だけを残すように糸球体で血液が濾過され、その後、必要なもの(水分・電解質)を尿細管にて再吸収するといった2段階の機能で構成されています。そのため、単に腎臓が悪いと言っても、疾患によって、濾過機能と再吸収機能のどちらが悪いかは異なるため、原因を特定する必要があります。また、身体の中でこうした役割を持つのは腎臓だけであり、身体における不要物の除去という重要な役割を一身に担っています。
ここで、急性腎障害(Acute Kidney Diseases) について解説していきます。この疾患は、通常、月・年単位で低下するはずの腎機能が、数時間~数日の間に急激に腎機能が低下する状態です。このような急激な腎機能の低下では、身体の恒常性が保てず、尿から老廃物を排泄できなくなり、体内の水分量や塩分量など(体液)を調節する機能が破綻します。その結果として、むくみ(浮腫)、食欲低下、全身倦怠感といった症状が急激に現れ、腎機能が急速に低下した結果、老廃物が除去できなくなり、慢性腎疾患(CKD)や敗血症といった疾病を引き起こす可能性が高いとされています。原因としては主に3つあります。ひとつ目は、全身疾患によって腎臓への血流が低下する腎前性(脱水症,うっ血性心不全,肝硬変)、二つ目は、腎臓よりも下の部分に原因のある腎後性(尿管・膀胱・尿道の閉塞等)です。これら二つは腎臓が原因ではなく、腎臓以外の部分が原因として、発症します。三つ目は腎臓自体が原因となる場合です。その中でも3つあり、腎臓での血流障害(両側腎梗塞,腎動脈血栓)、腎臓を構成する「糸球体」(急性糸球体腎炎,急速進行性糸球体腎炎)と「尿細管」(急性間質性腎炎,急性尿細管壊死)を原因とする場合があります。このように、疾患によって原因が異なるため、それぞれの原因に応じた処置が必要になります。
また、腎臓の特徴として、一度低下した腎機能を改善することは困難であるとされています(透析治療等はあくまでも代替に過ぎないと言う認識が一般的です)。そのため、腎機能の低下をいかに早く予測し、処置を行なっていくかが、その後の改善に大きく関与していくことになります。
研究のポイント
本研究では、こうした AKI を早期発見するために、電子記録情報を用いた RNN による疾患早期発見モデルを提案しています。現在、腎機能の測定指標として最も広く用いられているのは、クレアチニンと呼ばれる、腎機能を最もよく推定可能な物質の一つです。一方、クレアチニンでは、急激な腎機能の変化や初期症状での腎機能の低下が反映されず、早期発見には適していないと言う報告も数多くされています。特に、AKI の場合、数時間単位で腎機能が低下することから、早急な処置が必要になります。そのため、本研究では、クレアチニンを用いず、こうした急激な腎機能の低下を推定するモデルが提案されています。
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