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ChatGPTは株の値動きを予測できるか?:ニュースの見出しのセンチメント予測にて

ChatGPTは株の値動きを予測できるか?:ニュースの見出しのセンチメント予測にて

Large language models

3つの要点
✔️ ChatGPTに株式市場の値動きを予測する能力が備わっているかを調査
✔️ ニュースの見出しからその会社の株価にとっての影響(センチメント)を予測するタスク
✔️ ChatGPTのセンチメント予測は既存の手法より優れており,ChatGPTの出力に基づいた取引戦略はベースライン戦略よりも高い性能を叩き出した

Can ChatGPT Forecast Stock Price Movements? Return Predictability and Large Language Models
written by Alejandro Lopez-LiraYuehua Tang
(Submitted on 15 Apr 2023 (v1), last revised 22 Apr 2023 (this version, v2))
Comments: Previously posted in SSRN this https URL

Subjects: Statistical Finance (q-fin.ST); Computation and Language (cs.CL)

code:

本記事で使用している画像は論文中のもの、紹介スライドのもの、またはそれを参考に作成したものを使用しております。  

概要

ここ数ヶ月で,ChatGPTを代表とする大規模言語モデル(LLM)は大きな注目を集めています.しかしながら,経済の分野において,その実力は明らかになっていません.これらのLLMは経済データ用に特別に訓練されているわけではありませんが,あらゆるテキスト情報をもとに学習しており,市場の値動きの予測などに利用できるかもしれません.本研究では,その点を調査するべく実験を行いました.

背景

ChatGPTはGPT (Generative Pre-trained Transformer) をベースに開発された大規模言語モデル(LLM)であり,最も進んだ自然言語処理モデルの一つです.GPTはTransformer構造を利用した自然言語処理のための深層学習モデルであり,翻訳や要約,質問回答などの様々なタスクをこなすことができるものでした.これを継承したChatGPTも同様なタスクを扱え,それに加えて,人間のような対話的応答を返すことができる点が強みであり,チャットボットやバーチャルアシスタントへの応用が期待されています.一方で,株価予測という個別のタスクに対しては特別に訓練されているわけではなく,その能力がどれほどのものなのかは明らかになっていませんでした.

データ

本研究では二つのデータセットを分析に使用しました.

Center for Research in Security Prices (CRSP):米国の主要な証券取引所に上場している様々な企業の日次リターンや,株価,取引量,時価総額などの情報からなっています.ChatGPTが2021年9月までのデータで訓練されているため,それ以降の2021年10月から2022年12月までのデータをサンプルとして使用します.

ニュースの見出しデータ:CRSPのサンプル期間(2021年10月から2022年12月まで)に対応した,ニュース記事の見出しデータ.著名な通信社や金融ニュースサイト,ソーシャルメディアなどから得られた見出しです.これらの見出しに対して,見出しが会社に関連したものになるようにしたり,極端に類似した見出しは取り除いたりするなど,前処理とフィルタリングを施しました.

プロンプト

プロンプトはChatGPTの回答に対して,文脈や指示を与えるための文章のことです.本研究では,以下の形式のプロンプトを使用しました.

Forget all your previous instructions. Pretend you are a financial expert. You are

a financial expert with stock recommendation experience. Answer “YES” if good

news, “NO” if bad news, or “UNKNOWN” if uncertain in the first line. Then

elaborate with one short and concise sentence on the next line. Is this headline

good or bad for the stock price of _company_name_ in the _term_ term?

Headline: _headline_

プロンプト中の_term_には,short(短期)かlong(長期)が入ります.また,_company_name_には会社名,_headline_にはその会社に関するニュースの見出しが入ります.

このプロンプトは,ChatGPTに,株式取引に熟練した金融のエキスパートであるかのように振る舞うよう指示するものです.そして,与えられたニュースの見出しが,その会社の株価にとって良いものなのか,悪いものなのかを予測するよう指示しています.具体的には,その会社の株価にとってその見出しが良ければYES,悪ければBAD,不確実ならUNKNOWNを返します.加えて,そう答えた理由を一文で答えるよう指示しています.

実験と結果

複数の取引戦略による累積リターン(取引手数料は考慮しない)

 

ニュースが発表された企業全ての株を均等にポートフォリオに組み込む戦略(黒の線)をベースラインとし,ChatGPTの予測に従って,買いか空売りを行う戦略を比較しました.

緑の線はChatGPTが良いニュースだと判定した会社の株を買う戦略,赤の線はChatGPTが悪いニュースだと判定した会社の株を空売りする戦略,青はその両者を組み合わせた戦略に対応しています.ChatGPTを利用した戦略はいずれも,ベースライン(黒の線)よりもパフォーマンスが良いことがわかります.

予測スコアに対する翌日のリターンの平均値

ここでは,ChatGPTの出力を次のように数値化しています:YESを1,UNKNOWNを0,NOを-1.この表を見ると,GPT-1,2, BERT,などに比べて,ChatGPTの方が翌日のリターンの平均を上手く捉えたセンチメント予測ができていることがわかります.

本実験によって,ChatGPTによるセンチメントスコアが株式市場のリターンの予測に対して効果を発揮することが示されました.また,既存のセンチメント分析手法と,ChatGPTの比較を行ったところ,ChatGPTの方が優れていることも明らかになりました.ChatGPTがニュースの見出しというテキストデータから,微妙なニュアンスを捉えられる高度な言語理解能力を持っているためだと考えられます.これらの結果は,LLMを投資の意思決定プロセスに取り入れることの潜在的有用性を提示しています.

まとめ

本研究は,大規模言語モデル(LLM)であるChatGPTが,ニュースの見出しのセンチメント予測に基づき,株式市場のリターンを予測する能力があるかを調査しました.実験の結果,既存の伝統的なセンチメント分析手法よりも優れていることが示され,LLMが金融・経済の領域において有用であることを示唆しています.

今後LLMが経済の分野において浸透した時に,LLMが市場のダイナミクスにどう影響するのかや,市場に対して良い結果をもたらすのかといった点は,引き続き調査するべき重要な課題だと考えられます.

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