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衛星画像とDeepLearningによる畜産施設の監視。環境破壊のリスクの大きい施設の位置特定が容易に

衛星画像とDeepLearningによる畜産施設の監視。環境破壊のリスクの大きい施設の位置特定が容易に

その他

アメリカの畜産業の40%を占める大規模施設では毎年3億トンものゴミが排出されており、その中の60%にも上る施設が正式な登録がされていません。新しく発表された論文では、衛星写真にCNNを適用し、施設を発見・監視することで、これらの問題を解決しようとしています。

参考論文:Deep learning to map concentrated animal feeding operations

第一産業におけDeepLearning

最近DeepLearningの技術の進化を日常的にも感じることが多くなってきました。Googleの顔認証やYoutubeやInstagramなどのSNSにおけるレコメンデーションなど日頃使っているツールにDeepLearningの技術が応用されています。これからますます多分野・多領域でそれらの進化を感じられる場面が多くなっていくことでしょう。

一方、日本だけでなく世界中で、「第一次産業」である「農業」「漁業」「畜産業」「林業」の分野は起源が古く時代の流れに沿って大きく発展してきました。しかし、昨今のDeepLearningの盛り上がりにおいて、この分野への融合が大きく注目・報道されることは少ないのが現状です。第一次産業への応用や注目がもっと盛んになれば、コストカットだけでなく、人手不足の解消や環境問題の解決への一歩に繋がるはずです。この記事では、アメリカの「畜産業」における応用研究として1つの論文を紹介します。

画像認識で家畜施設を発見する

紹介するのは機械学習を用いた画像認識アルゴリズムを用いることによって、ノースカロライナ州において、従来の手法より15%多く新たに”CAFOs(Concentrated Animal Feeding Operations)”と呼ばれる大規模畜産施設が発見されたというものです。

実は、アメリカの畜産業の40%を占めるCAFOsでは毎年3億トンものゴミが排出されており、そのCAFOsの中の60%にも上る施設が正式な登録がなされておらず、適切なゴミ処理が施されていません。これは食糧安全や水質汚染の観点で良くありません。

図 1 . CAFOs(pig)の施設(内観)

そもそも、ノースカロライナ州のCAFOsの60%が公式な認可を持たない施設で占められているのは、施設の位置や大きさといった基本情報が欠けているからです。従来は衛星画像から目視で探して車で直接確認する方法を取っていましたが、CNN(Convolutionized Neural Network)を用いる手法に変えたことで時間と人材の節約につながりました。さらに環境破壊のリスクの大きい施設(=sizeの大きい施設)の位置の特定なども容易になりましたこうした。こうした施設の監視にも機械学習は役立っています。


図 2 . CAFOsの外観

どのように発見するのか

高解像度衛星画像にCNNを適用します。Googleで開発されたInception v3 のネットワークと学習済みパラメータを用いて2つの独立したネットワークを構成し、それぞれで家禽施設と鶏施設を特定/分類します。学習にはそれらの施設を含む画像(全体の約10%)と含まない画像(90%)を用意し、CAFOs(大規模畜産施設)を含むものは絶対数が少ないのでoversamplingして学習させデータを増加させます。

Inception v3ネットワークの構造は以下の図になります。


図 3 . Inception v3

次に、上で分類されたそれぞれの施設に対して、「施設の位置(経度・緯度)」を推定します。CNNのpooling層の後の’class activation maps’と呼ばれる、フィルターで活性化されたピクセルがどこに存在するかというmapを用いて施設の中心をk平均法(kmeans)で決め、画像の中心に施設が来るよう処理します。そして、施設を長方形で表現しその中心を施設の位置とみなします。


図 4 . class activation mapsの例

AIと環境問題

このアプローチは、コンプライアンス・監視の優先順位を知らせることができます。これによりノースカロライナでは、特に環境破壊のリスクの大きい施設(=sizeの大きい施設)の位置の特定が容易になったそう。また、認可を持たない施設の特定などにもつながっています。これから先には、衛星画像の鮮明化や更新頻度の増加によりさらなる効率性が達成されることが予想されます。

GAFAをはじめとした企業(private sector)では開発がどんどん進んでいるのに対し、公の機関(public sector)は開発やその応用という面で遅れを取っているのが現在の問題の一つであり、お互いが密に連携を取ることが重要になってくるのではないでしょうか。人々の生活を便利にするようなAIの技術がよく注目/報道される中、この技術は環境問題にも大きく貢献していく可能性が大きく、またそうしなければいけないことを知っていただければ幸いです。

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Kodai Yasuda avatar
大学4年生。農学部でDeepLearningの応用研究をしています。AI-SCHOLARでは主に第一産業における機械学習活用などを紹介していきます。主に 画像処理に興味がありますが、GANなどにも挑戦していきたいです。

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