最新AI論文をキャッチアップ

元Deepmindのシニアリサーチエンジニアが教える、論文の読み書きのコツ

元Deepmindのシニアリサーチエンジニアが教える、論文の読み書きのコツ

インタビュー

AI-SCHOLARではAI論文のリサーチ力に注目しています。実装力や英語の能力はもちろん必要ですが、リサーチ力も必要な能力です。そもそも課題把握もリサーチ力ですし、その解決方法もリサーチし、技術的な観点とビジネス的な観点の双方向で考える必要があります。なかでもAI-SCHOLARは技術的な観点に注力しています。なぜなら、技術は知らなければそもそも”ない”ものと同義です。

だからこそ日進月歩で進むAIの技術についていくために、今回は世界全体にAIという言葉を大きく印象付けた囲碁AI「AlphaGo」を生み出したことでも有名なGoogle DeepMindにてリサーチエンジニアとして働き、現在日本でSDGsを達成するためのAI開発支援に焦点を当てた株式会社Recursiveを設立しているTiago Ramalho(ティアゴ・ラマル)さんにAI論文のリサーチから論文の執筆までの最重要項目をお聞きしました。

自己紹介

ティアゴ・ラマル
ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンにて、理論/数理物理学 修士号、生物物理学 博士号を取得。卒業後、Google DeepMindに入社。シニアリサーチエンジニアとして、強化学習、予測モデル、自己管理型学習など、最先端プロジェクトに従事しNatureなどの国際雑誌に多数の論文を発表。その後、多国籍AIスタートアップ、コージェントラボにリードリサーチサイエンティストとして入社し、来日。情報検索&質問回答、デザイン生成モデル、OCR、NLP等、様々なプロジェクトを推進。2020年8月、株式会社Recursiveを共同創業し代表取締役に就任。

論文を読むときのコツ

論文を素早く読むことは、優れた研究者にとって必須の能力になっています。毎月のように多くの文献が発表される中で、常に新しい情報をキャッチアップするのは大変なことです。ですから、論文に多くの時間を費やすのは、それが本当に必要な場合だけにすべきだと私は考えています。

以下は私が実際に行っている、なるべく論文に時間をかけずに情報を得る方法です。

  • TwitterやGoogle scholarで関連する研究者をフォローする
  • arxivやarxiv-sanityをフォローする

上記で得た論文タイトルで関連性がありそうな場合は、次のようにします。

  • 引用文を保存する
  • アブストラクトを読む
  • アブストラクトを読んで、研究内容がわかるようであれば、それ以上は読まない。
  • アブストラクトが面白そうなら、すべての図とキャプションを読む。
  • 論文の内容がわかるようであれば、そこで読むのをやめる。
  • もう少し理解したいと思ったら、introductionとmethodセクションを読んでからやめる。

メソッドを再実装する必要がある場合は、論文の残りの部分を読みます。論文のオープンソースコードを常に探してみましょう。論文にはない詳細が書かれていることが多いです。

上記のように、どういった場合に論文の続きを読み、どういった場合に論文を読むのを辞めるかをルール化しておくことが重要です。

論文を書くときのコツ

次は論文を書くときのコツです。まずは、当たり前ですがたくさんの論文を読むことです。おすすめなのは、好きな著者を選んで、その人の書き方を真似ることです。

ただそれだけだと具体性がないので、私が論文を書くときに意識していることを紹介します。

  • できるだけ早く論文の骨組みを書き始める
  • リサーチをしながらアイデアやモチベーションを書き出しておく。後々のライティングのベースとして役立ちます
  • 画像などのイメージを先に作る。画像が面白いかどうかが、読者の心を掴みます
  • アブストラクトを書くのは、最後にする
  • 序論の最後には、必ず研究の貢献度の要約を書く
  • 問題点の説明に多くを費やす。解決しようとしている問題は何か、そしてその問題を解決するためにこの研究が役立つ理由は何か。
  • 仮説を検証するために新しいデータセットを作成した場合は、なぜそれが既存のデータセットと異なるのか、なぜそれが必要だったのかを説明する
  • 可能であれば、実験のソースコードへのリンクを共有する

そして最後に大事なことは、なるべくシンプルな文章を書くことです。論文によらずですが、長い文章は小さな文章に分けましょう。

アブストラクトは、多くの読者が論文を読みすすめるかどうかの大事なポイントになるので、最後に仕上げます。そして読み進めたあとにすんなりと内容が理解できるように、画像と課題、貢献度など重要なポイントをしっかり抑えて流れがきれいになるように心がけましょう。

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