「データサイエンティストを全員失業させる」MatrixFlow社長が語るAIの民主化
現在、政府はAI人材を年間数十万人単位で増加させる戦略などを発表しており、国を挙げてのAI人材育成が急務となっています。
そんな中、「誰もがAI技術を活用する社会の実現」をミッションに掲げるAIベンチャーMatrixFlowは、プログラミング不要でドラック&ドロップで簡単にAIを構築できるプラットフォーム「MatrixFlow」を提供しています。最終的にはAIを民主化し「データサイエンティストを全員失業させる」と語るMatrixFlow代表の田本氏。今回、編集部ではその真意を聞いてきました。
目指すはAIのApp Store
−MatrixFlowについて簡単に教えてください
MatrixFlowは、データ分析・機械学習の知識がなくても精度の高いAIを構築できるサービスです。一般的に使われている数多くのAIアルゴリズムやそれに付随するパラメータを自動で試行し、最適なアルゴリズムとパラメータの組み合わせを探索します。プログラミングじゃなくマウス操作で作れるUXになっているので、機械学習の専門知識が”全くない”開発者でも、簡単にコストを掛けず最適なアルゴリズムとパラメータの組み合わせを探索することができるようになっています。
AIを導入するためには、数学やプログラミングの知識だけでなく、業界や事業についての知識や知見も必要とされていますよね。ドメイン知識を多く持っているビジネスサイドの人にMatrixFlowを使ってもらうことで、よりダイレクトに課題を解決して欲しいと思っています。
将来的にはマーケットプレイスを作りたいと思っているんです。既存の会社が作っているアルゴリズムってバラバラに分散されていて、似たようなソリューションで似たようなアルゴリズムなのに、別のソリューションとして各会社がそれぞれ出していて、車輪の再発明的なことが起こっている。それがすごく無駄だと思っていて、MatrixFlowのブロックとして出して欲しい。そういうアルゴリズムがプラットフォーム上にたくさん存在してやりとりできるような、最終的にはAIのApp Store的な世界観を実現したいと思っています。
−会社を立ち上げたきっかけを教えていただけますか
数年前くらいから、GoogleがAIの民主化ってのを謳いだして、その「民主化」というワードに強く共感したんです。生まれにしても育ちにしても属性だったり環境によってその人の人生が大きく制限されてしまうことってあるじゃないですか。昔からそういった機会の不平等さみたいなのが嫌いだったんですね。
そういうのを打破してきたのは常にテクノロジーだと思っています。昔だと貧しい人は教育を受けられなかったし、一部の人達が情報を独占していたわけです。インターネットが出現したことにより、権力の源泉であった情報独占が崩れ、誰にでも情報が行き渡るようになった。例えば昔は、自分の考えを発信したいときにテレビに出なきゃいけなかったのが、今は、SNSやYouTubeでだれでも発信することができますよね。AIがエンジニアじゃない人でも使えるようなツールを作れば、環境要因で制限されてる人たちのいろんな可能性が開けると思っています。
でもよくよく考えてみると、民主化って言いつつもAIを使えてるのってエンジニアしかいなくて、これは本当に民主化なのか?っていうのが疑問でした。当初は自分が作らなくても、誰かがそういったソリューションを作ってくれるだろうって思ってたんです。結局一年くらいたっても誰も作ってこなかった。自分がやるしかないと思って試しにオープンソースで作ってみたら、いろんな人から反響をいただきまして、そのまま会社を立ち上げたという経緯になります。
【話題になったツイート】
Auto MLによる業界構造の変化
−今後こういったAutoMLのようなプラットフォームが出てきたときにどのように業界構造が変化して行くのでしょうか
難しい技術のコアとなる部分は一部の優秀な技術者が担当して、それ以外の人たちはビジネスのほうに集中すべきだと思います。
前処理とか、パラメータチューニングとか、アルゴリズムの選定とか、そういう作業は今後全部自動化してしまうと思うので、あとは、どう適用するか、どのようにAIを組み込んでいくべきか、ビジネスとしてどう活用していくかが重要です。
スキルに関しては、データを読めて、問題がどこにあるのかをちゃんと把握できるっていう知識が一番重要になってくると思います。そういう意味ではコンサルは強いんじゃないんでしょうか。手段としてのAIが簡単に使えるようになっても、問題設定ができない、問題がどこにあるか分からないって人は絶対にいますから。逆に、モデル設計だけで、問題設定できない受託なんかは全部死ぬんじゃないですか。受託も、Kagglerも全部死んで、アルゴリズムは全部MatrixFlowに乗ってるみたいな(笑)
−政府が2025年までにAIの基礎知識を持つ人材を年間25万人育てる目標を掲げていますがどう思われますか
僕は、学ばなくていいならそっちのほうがいいに決まってると思うんです。今AIを学ばなきゃいけないって散々色んなところで言われてますけど、MatrixFlowは学ばなくても使える世界にしたいんです。
例えば、スマホって、表面的な操作がわかれば、中で使われている数学を知らなくても使えるじゃないですか、同じようにMatrixFlowでもボックスの性質だけ知ってれば、誰でも使えるっていうようなツールを目指しています。
得意な人や好きな人はやればいいと思うけど、難しいことを無理して勉強する必要はないというのが僕の考えです。中で使われている数学や理論を一から勉強して構造を知ることより、技術をどのようにビジネスに応用させていくかを考えることの方が重要だと思ってます。
世間では、基礎的なところから勉強して土台を作らないとなんちゃってAI人材が大量生産されるなんて言われてたりしますが、ある意味、真逆のスタンスですよね
そうですね。機械学習をやりたい人はいくらでも勉強してもいいと思いますが、やりたくない人がお金を稼ぐことを目的として基礎の勉強をする意味は無いですよね。
−今後のAI市場はどうなって行くと見ていますか
一度AIブームは終わると思っていて、終わったあともう一度ロボティクスと絡めたAIブームがまた来ると見ています。今はデータをとってきて機械学習にかけるっていう形ですけど、その先にあるのが、ロボットに料理してもらうとか、ロボットが警備するとか、自動運転とかでしょうね。ロボティクスになった時にどうトレーニングするのかっていう問題が出てきて、いかにVR上で現実と乖離のない状態でトレーニングするのかってのが重要になってくる。VR上でどうトレーニングするのかとか、そっちの方に課題が移って行くんじゃないでしょうか。MatrixFlowでもそこに向けた準備はしていかないといけないなと考えています。
−AIブームはどうような形で終わると思いますか
研究ベースで見ると論文の数は増え続けているけど、ビジネス活用が研究に追いついてなくて、まだ、かなり乖離がある。ビジネスで使える範囲はかなり狭いんじゃないでしょうか。逆にそこに到達して汎用的なものになってしまったら今度はコモディティ化してしまう。そうなってくると、企業が、機械学習の博士号持っている人たちを、高い年収で雇うみたいなこと自体が少なくなってきて、業界が縮小していくんじゃないでしょうか。
−今後のビジョンを教えてください。
現状のMatrixFlowはエンジニアが天下り的に使う分には問題ないと思うんですけど、やっぱり、機械学習全く分からないって人からは、「使い方が難しい」といった感想をいただきますね。今後はもっと分かりやすく誰にでも使えるようなUXへと改善していく必要があると考えてます。最終的な目標は、MatrixFlowでAIを誰にでも使えるようにして、データサイエンティストを全員失業させることです。(笑)
ありがとうございました(笑)
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AI(人工知能)への注目度は、年々高まっています。そのため一部企業では、日本ディープラーニング協会の主催する「G検定」「E資格」の社内合格者を公開して、自社のAIに関する知見をアピールする動きも出てきています。
そう言った人材がいることもAI開発のある意味1つの実績になります。
AI-SCHOLARを読んでいる読者は、今こそE資格を取得し、早めに自分のスキルアップを狙っていきましょう!
企業においてはある調査で、AI開発に成功している企業は社員全体のAIに対する知識レベルが高いそうです。
AI開発やAIを用いる社会になる今こそ企業は社員のAIレベルをあげましょう!
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