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インフルエンサーマーケティングをもっと効率的に。ぴったりのインフルエンサーを機械学習で見つける。

インフルエンサーマーケティングをもっと効率的に。ぴったりのインフルエンサーを機械学習で見つける。

論文

インフルエンサマーケティングが当たり前となった2019年。市場規模は10億ドル*とも言われています。ただし、どのインフルエンサーに頼めばよいの?と悩む担当者も少なくないはず。そんな課題もAIが解決してくれるかもしれません。インフルエンサーマーケティングを数値的な根拠からアプローチして効果を最大にする実験の結果が、英コロンビア大の研究者3名による共著の論文で発表されました。

[*参照]:http://mediakix.com/2017/03/instagram-influencer-marketing-industry-size-how-big/#gs.BFQvZgPz

いままでのインフルエンサーマーケティング

インフルエンサマーケティングの成功事例はたくさんありますが、再現性が薄いことが課題。さらに、PRは長期戦。すぐに結果が数値化されないことも担当者の悩みの種です。事前に効果を予測しようという試みは以前からもありましたが、さらに精度をブラッシュアップさせたのが今回の実験。

インスタ上のどのインフルエンサーに依頼すれば、最も効果的なマーケティングを行うことができるのか?を機械学習で計算しようと試みました。媒体は市場規模最大のInstagramです。機械工学、コンピューターサイエンス、コンピュータ工学と3つの専門家が携わり多角的な視点から市場の動向を観察し、実験は概ね成功していると報告されています。

どうやって予測するの?

判断するべき要素が膨大と思われるインフルエンサーの選定。一体どのような手順で予測しているのでしょうか?

❶準備する:データを集める

まずは学習に必要なデータを集めます。Richard ArcegaによるPythonで開発されたオープンソースツールがあるので、これを利用。Instagramユーザーのプロフィールなどの情報をまとめてダウンロードすることができます。

❷読む:Bag of Words で行列化

集めたデータを機械処理できるように行列化します。今回の実験では Bag of Wordsの方式を採用。該当データの文章にどんな単語がどの頻度で含まれているかどうかのみを考え、単語の並び方などは考慮しないものです。モデル仕分けのない袋にジャラジャラと情報が入っているイメージ。例えばこの記事では、ここまでの間に「インフルエンサー」という単語は12回、「機械」「予測」という単語はそれぞれ3回ずつ出現しています。ーーといった具合で一定数の文脈を汲み取ろうとします。

❸予測:最適なマッチングを探す

そしていよいよマッチング。特定のブランドに対して最も適した影響力のあるインフルエンサーを探し出します。インフルエンサーとターゲットブランドのプロファイルデータを組み合わせたマトリックスを学習させ、訓練されたk-NNモデルでインフルエンサープロファイルの近似度に基づいて予測を行うことができます。

ドッグフード、アウトドアグッズ、デリバリーピザと異なる3つの市場をまたがってパフォーマンステストを実施。ドッグフードのブランドを広告するのに適したユーザーには、山やピザではなくきちんと犬について投稿する集団に割り当てられていたといいます。

改良点

これだけでも十分魅力的ですが、さらに精度を上げるために改良すべきポイントが論文内で述べられています。キーワードは「絞る」と「拡げる」です。

❶絞る:より詳細なメタデータを!

マーケ担当としては「この人がインフルエンサー!」と決めてほしいものかもしれません。絞込の精度を上げるためには、どのインフルエンサーがどんな人物なのか?のデータが重要。よりシャープにインフルエンサーの輪郭を捉える必要があります。

より精度を高く個人を描写するために、今後はもっと豊富なメタデータを取り扱うべきだと論文は指摘しています。フォロワー数、投稿ごとの平均いいね数、投稿頻度……などなど様々な補足情報を加味していけば、検索の条件をもっと絞り込むことができるとのこと。

❷拡げる:ピザはピザだけ?

一方で選択肢を拡げることも忘れてはいけないといいます。ピザのマーケティングにはピザ以外のタッチポイントだって有効なはず。食べ物全般に興味のある人にリーチしたって良いわけですし、スポーツ観戦が好きな人にピザの情報を届けることだって悪くないアプローチです。

このように、パイを拡げることも「最適な」マッチングの鍵となるでしょう。論文内ではカスタムパラメータを利用した識別が課題と記述されています。

インフルエンサーは作れる?

インフルエンサーそれ自体が完全に機械化されるとはきっとありません。インフルエンサーが肩代わりしているのは、主観を得るために必要な知識や手間のみならず、主観的になるための感受性・主観をアウトプットするための言語能力も含まれます。これらを持ち合わせない人に変わって豊かな感情をアウトプットするのがインフルエンサーの本質です。Lahuerta-OteroとCordero-Gutiérrezも「インフルエンサーはネガティブ・ポジティブの質を問わず、積極的に感情を表現することに余念がない」と指摘しています。

①インフルエンサー自体は機械化されない、②ブランドに適したインフルエンサーをAIが数値的に判定できる

……であれば、機械に評価されたインフルエンサーをベンチマークにしてより上質なインフルエンサーを「人の手で」作り上げることができる事ができるのではないでしょうか?

パーソナライズの時代に必要なのは「絞る」こと。なかなか自分たちに合うようなインフルエンサーは現れないかもしれません。であれば、ニッチな需要に応えられるインフルエンシヴなアイコンを作り上げてしまうのも一つの手かもしれませんね。

そんな風に技術を最大限活用して、より良い戦略をとる企業が今後現れるやもしれません。

川合裕之 avatar
AI, IoTライター。新たな技術が如何に社会や日常に接続されるのか?をテーマに日々勉強中。人間でなくても出来ることを追求することで、逆説的になにが私達を人間たらしめているのかを考えます。アメリカ映画を中心にカルチャー系の記事も多数執筆。

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