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全人類がわかる!? 日本最大級の講座数を持つAIベンチャーが考えるAI導入に必要な人材とは?

全人類がわかる!? 日本最大級の講座数を持つAIベンチャーが考えるAI導入に必要な人材とは?

インタビュー

【全人類がわかる統計学】という統計界隈で日本最大級の学習メディアを運営しつつ、多くの企業にAI導入をしている株式会社AVILEN。AIの開発だけでなく、人材育成まで総合的にAI事業を推進するのが特徴です。

ビジネスにAIを導入・活用するにあたって、どのようなチーム編成や教育方針が求められるか?

現役で東京大学大学院にてAIの研究しつつ、多くのプロジェクトを推進してきたAIコンサルタント高橋光太郎さんと、開発する全てのプロダクトのUI・UXデザインを担当しているデザイナーの高橋香輝さんにお話を聞いてきました。

(聞き手: 和田吉平、松下真子)
(写真:松川真之介)

以前から、統計学の勉強の際に、ちょこちょこ助けてもらっていた『全人類がわかる統計学』という学習メディアを運営している株式会社AVILEN。会社メンバーを見ると、AIエンジニアやデータサイエンティスト、さらには数学者などのAIに関連するスペシャリストがずらり・・・

個人的にも大注目していたAVILENさんですが、今回とうとう願いが叶ってオフィスにお邪魔し、気になる事業内容や大事にしている考え方などを聞いて来ることができました!

AVILENさんの事業と大事にしていること

和田

本日はお時間ありがとうございます。
早速、お話聞かせていただきたいと思います、まずAVILENさんの事業内容を教えて頂けますか?

高橋光太郎さん

株式会社AVILENはAIのスタートアップ企業であり、主にAIシステムの開発AI人材の教育を事業として行なっています。

開発の仕事では、製造業界における不良品検知などの工程を自動化するプロジェクトや、鉄などの素材加工業において、手書き図面を自動で読み取り、専用のアプリに数値を自動入力するシステムの開発などを行なっています。

AmazonやGoogleなどの既存クラウドサービスを利活用するのではなく、クライアントの要望に特化したモデルを作り、より精度の高いAIを作ることが大企業との違いになります。

高橋香輝さん

教育の仕事は、法人向けの人材研修と個人向けのハンズオンセミナーが主力サービスです。こちらの講座一覧をご覧下さい。

先日、作り続けてきた講座を一覧にしようと思い、作り直したんです。かなり講座数が多くなっていて、自分達も驚きました。おそらくAI関連では日本一の講座数だろうと自負しております。

和田

JDLAさんから認可を受けている講座もありますね!
※JDLA: JapanDeepLeraningAsosiationの略で日本ディープラーニング協会のこと

高橋光太郎さん

そうですね、現在JDLAから認可を受けた講座を持っているのは8社で、そのうちの1社が私達の講座です。他の業者さんが「AVILENよりも良い条件で開催するのは厳しい」と言って、参入できないくらいに頑張っています(笑)

JDLAさんのG検定・E資格に対応する講座にも力を入れていて、実戦で活躍できるAIジェネラリストやAIエンジニアを育成することを目標としています。

現在、ハンズオンセミナーでは延べ5,000人以上の受講者の方々に講義を行なっているのですが、様々なレベルの受講者の方々に来ていただいています。何もわからない初学者から、上級者向けに様々な講座を作っていたら、ゼロから実務レベルまで一気通貫して学べるプログラムとなりました。

※G検定: JDLAが認定したAIジェネラリストの資格試験、E検定: JDLAが認定したAIエンジニアの資格試験

和田

僕みたいな数学で心が折れて文転した人でも安心ですね。

高橋光太郎さん

数学に苦手意識を感じている方は結構いらっしゃいますね。基礎レベルの数学講座もあるので、和田さんもぜひ(笑)
AIを実務で活用していく上で、数学や統計を学ぶことは基礎力を底上げしてくれます。

松下

ビジネス向け講座とエンジニア向け講座ではどちらの方が受講者数が多いのでしょうか?

高橋香輝さん

現在はAIエンジニアを志す方が多いですね。
ただ、マネジメント層や経営者の方々がビジネスサイドの話を聞きに来ています。

高橋光太郎さん

マネジメント層や経営者の人は、現場で手を動かすわけではないですが、皆さんAIを学ぶ必要があると気づいています。

まずは、「知らない」から「AIを語れる」というステップに進むことが重要です。AIエンジニアの場合は、その先のAIを使えるという状態に進む必要がありますね。

和田

知らない→語れる→使えるという大きく3ステップあって、みなさんが自分の目的に合わせて、ステップを一つずつ上がっていくことが大事なんですね。ありがとうございます。

AVILENの講座はココが違う!

和田

では、AVILENさんが力を入れている教育事業についてですが、正直、他社さんでも同様なセミナーって沢山ありますよね‥?ココが違うんだ!みたいな強みや特徴があれば教えてください。

高橋光太郎さん

まず、AIのセミナーは、大きく分けると二種類あります
言い方が難しいですが、AIを実装できる人によって作られたセミナーと、AIに詳しくない人が作ったセミナーの二種類があります。後者だからダメという話ではなく、僕らは前者が持つメリットについてお話させていただきます。

AVILENでは、CTOが直接講義を行うことも多々あります。また、経営陣はそれぞれAIに特化した研究や実務経験を積んでいます。その理由は、教科書通りの講義では実務では役立たない可能性が高いと実感した経験があるからです。だからこそ、実践で活躍できるAIエンジニアの知見を取り込む必要があると感じています。

さらに、弊社では、インタラクティブな講座スタイルを大事にしています。安心してわからないところをすぐに聞けたり、ケース演習を増やすことで「実践力」を高めています。

AIビジネス活用講座を例に挙げると、4日間のうち3日間はAIビジネスのケーススタディやAIの基礎知識を学びます。ココまでは、しっかりやっている他社さんと比べて、質に大きな差はないと思うのですが、僕らは4日目の内容が全然違います。

4日目はお客さんの目的に合わせて内容をオーダーメイドしています。例えば、「AIを発注する企業を見分けられるようになる」ことが直近の目標であれば、AI企業の選び方やシステム会社への発注方法などより具体的なケースを想定して演習を行います。

他にもコンサルタントの方なら営業の際に、AIをソリューションの1つとして語れるとか、データの見方などニーズに合わせて、実践できる場を提供します。明日から実践できるくらいにわかりやすい内容になっているかということが講座を作る際の基準になっています。

高橋香輝さん

その際、AIエンジニアだらけの中でデザイナーがどういう役割を担っているかについて話をさせてください。例えば、AIビジネス活用講座を例に挙げると、AIに関する知識はない初学者の人が多いんです。

そこで、文字ばかりのスライド教材であったり、難しい単語が多いと、初学者は何が何だか分からなくなってやる気を無くしてしまうじゃないですか。

そうならない様に、わかりやすく言葉を噛み砕いてイラスト化したり、「自分が今これを勉強しているから、次のページでこの説明がある」と言った前後関係を明確化し、わかるから、楽しい!と感じる状態を追求していることもAVILENの特徴の一つかなと思います。

和田

①教材がわかりやすく、「わからない」から「知る」、②自身の目的に合わせた演習で「使える」に落とし込む。教育と開発を両方扱っているからこそできることなんですね。

高橋光太郎さん

やっぱり、どうしてもやらないと身につかない部分があるので、実践は本当に大事にしていますね。

過去の事例で、法人向けにビジネスAI活用を行なったのですが、『社内でAIビジネス立ち上げたい』という要望があったんです。また、講座だけではなく、専門家としてチームの壁打ち相手になってほしいと言われて、チームに入ってAI事業戦略を作るところまでやって、そのチームがその後AI事業を始めるといったことがありました。まるで皆さんと同じ会社になった感覚で僕も熱くなってしまい、自分自身も楽しんでいましたねw

AI事業の担当者に求められるスキルと心構え

和田

なるほど。そういった仕事、ちょっと羨ましいです。
ちなみに、AI開発の仕事をやっているからこそ見えてくると思うのですが、AIプロジェクトマネージャーに求められるスキルと心構えみたいなものってありますか?

高橋光太郎さん

まずは、AIエンジニアとAI導入を考えているお客さんの間に立って、関係を取り持てる人が求められますね。どうしても両者の間で板挟みになってしまいますので、そのプロジェクトの成果を両者が同じイメージで共有できているか?が非常に大切になってきます。

特に、AIを活用したシステムは、実際に試してみないとわからないことが多々あります。だからこそ、常に「このデータを使うと、こんな成果が出ます。今後、こういう課題や可能性が想定されます。」など細かくお客さんとコミュニケーションを取って、エンジニアとクライアントの認識にギャップが生まれない様にすることが必要ですね。

スキルでいえば、AIを実装できるスキルまで持つ必要はないのですが、最適な手法やモデルの評価方法をわかっているといいですね。プロジェクトに参加しているエンジニアからすると、「AIをわかっていない人」と働くことは嫌ですからね。それが原因で、最近ではエンジニア採用に苦しむ会社も多いみたいです。だからこそ、クライアントだけでなくエンジニアからも信頼を得られる様に学ぶことがいいのではないでしょうか?

そういう意味でAIビジネス活用講座を開催していて、AIの基礎知識を知っていることを証明する「G検定」の資格獲得も一つの信頼の証になると考えています。

和田

でも、資格や検定を取るのって大変そうですよね・・・。お金とか時間とかかかると、社会人として働きながらでは難しそうなイメージです。

高橋香輝さん

合格までのステップを理解しておけば、認定資格を短期間で取得することは可能です。

まず、AIジェネラリストを証明するG検定は、正しく勉強すれば短期間で合格することが可能です。ただし、知識の理解だけではなく、ビジネスの現場で活躍できるようにならないといけません。AIビジネス活用講座で実践を行うので、皆様に受講を推奨しています。

次にAIエンジニアを証明するE資格は、JDLAから認定を受けた指定のプログラムで、修了認定を受けないとE資格の本試験を受けることができません。よって、G検定に比べて多少時間がかかります。E資格対応講座は、基礎レベルと応用レベルが一体となった長期プログラムが一般的です。「期間は長いし、受講料が高いから参加をためらう」という受講者の声に応えるため、短期間で安く参加できる仕組みをつくりました。事前に基礎知識の確認をするテストを実施し、合格者は基礎講座をスキップし、短時間で安く参加できます。また、テストを設けたことで、受講の前に自身の弱点を把握できるというメリットにもつながりました。

和田

そのように短時間に自分のわからないところから始められるなら、確かに、資格の取得も一つの手段として有効ですね!

マネージャーに求められる素質とスキルはわかりました、では今度はメンバーに求められる素質とスキルはなんでしょうか?

高橋光太郎さん

こういう人が必要という答えはないと思います。メンバーそれぞれに専門分野があって、メンバー全体でプロジェクトに取り組むので。

スキルは、各専門分野に尖った人材が求められると思います。

強いていえば、AIプロジェクトは他のビジネスより臨機応変力が求められると思います。
AIは、試さないとわからないことが多いので、急な方向転換が非常に多いです。マネージャーに限らず、気持ちを切り替えて、すぐに次に進む心構えがある人の方が向いていると思います。

AIプロジェクトを進める上で優秀な人は2パターンいます。一つは、AIを深く理解していて、数学や統計学の根本的な考え方を理解しているエンジニア、もう一つは、AIの適用先のドメイン知識(専門知識)をしっかりと現場から吸い上げられるビジネスプロデューサーですね。

後者のようなタイプがいないと、どのデータがいいデータかわからないので。お客さんとの付き合いが上手く、情報を引き出し、プロジェクトメンバーに正しく共有する。つまり、適用先のドメイン知識とAIを繋ぐ、通訳者のような存在は今後非常に求められるでしょう。AIプロジェクトには、こういった関わり方もありますね。

高橋香輝さん

AIエンジニアは難しそうだから、ビジネスプロデューサーになろうと思う人もいるかもしれません。ただ、今AIエンジニアになる絶好のチャンスでもあるということも忘れないでください。今、AIを実装できるエンジニアは圧倒的に不足していて、今から本気で勉強することで、多くのAIエンジニアを指揮する開発リーダーというポジションになりやすいと思います。

文系だからとは思わず、バックグラウンドを活かして挑戦していただきたいですね。実際に弊社の講座を受けている人には、初学者だった方がAI開発をしていたりするので。

AIを社会実装する際に感じる課題

和田

ちょっと話は変わるのですが、御社の事業内容は大きなくくりで言うとAIを社会実装していくと言うことだと思っているのですが、その上で難しいな課題だなと感じる点があれば教えてください。

高橋光太郎さん

お客様がAIをわかっていない、かつ過度にAIに期待しているというところですね。AIならなんでも出来る、魔法みたいに思っていることが多いです。

でも、実際はまだまだ出来ない事も沢山ある。この認識の違いは後で様々な問題を引き起こします。

『これくらいはできると思ってたんだけど?』みたいに言われることだってあります。
最初に認識をしっかりすり合わせないといけないですね。

他にも、先ほどAIプロジェクトにおける優秀な人材の話で述べたとおり、AIプロジェクトはAIだけを完全に知っていれば上手くいくと言うものではなく、AIを適用する業界への知識が必要不可欠である事も難しいと感じる点です。

例えば、機械の故障予測にAIを用いられることがあるのですが、その際に人がどこを見ているのか?故障の予兆は何か?など現場の人しか知らない適用先の知識も求められます。この知識がないと、いいデータが取れず結果としてダメなAIが生まれてしまう恐れがあります。

だからAIビジネスは他のビジネスより綿密にステークホルダー同士が連携しあう必要がありますね。そのためにも、お客さんがAIを知っていることは重要だと感じていますし、お客さんから現場の知識を引き出すことも非常に重要だと感じています。

AIは作って終わりじゃない

和田

開発の際、お客さんに教育研修を受けてもらってからAIを開発するなんてこともあったりするのでしょうか?

高橋光太郎さん

勿論あります。開発に関する打ち合わせに併せて、そのまま研修を受けていただくことがありますね。

高橋香輝さん

逆のパターンも多くて、AIを開発した後に「これ社内で運用できるようにならなきゃだよね」といって部署の方々全員で受けに来るなんてこともあります。

和田

やはり、運用にも知識は求められるんですね。

高橋光太郎さん

そうですね、世の中の情報って常に更新されるじゃないですか。そうするとAIにインプットするデータも常に更新しないと古いAIになってしまって、変化に対応できなくなっていきます。

さらに、お客さん自身が自社製品にAIを活用するのであれば、その商品について話せないと営業もしづらいじゃないですか。そういったことを防ぐためにもクライアントにはAIを丁寧に説明して、知っていただきます。

最後に

和田

有難う御座います。最後に何か一言・二言メッセージをもらえますか?

高橋光太郎さん

AIは、便利なんですが、全ての課題を解決することはできないんですよ。どうしても精度100%というわけにはいかないので。
だからこそ、AIに対する過剰な期待を抑えられる様に、「知らない」から「AIを語れる」に向けた一歩を皆さんが踏み出してくれれば嬉しく思います。

和田

有難う御座いました、弊メディアも『AIをより身近に』というコンセプトでAIの正しい知識を皆さんに持ってもらうべく活動していますのですごく共感できました。
今後ともよろしくお願いします!

まとめ

AI人材に求められるのはAI知識と、AIと適用先ドメインの間を繋ぐことの出来るプロデューサー。

・まずは、AIについて「知らない」から「AIを語れる」に一歩でもレベルアップしておくことが大事。

・いつかAIについて勉強するつもりなら、早い方が断然お得であること。

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