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泉卓真が仕掛けた!レガシーな業界にAI・IoTでイノベーション

泉卓真が仕掛けた!レガシーな業界にAI・IoTでイノベーション

インタビュー

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AIによる業務効率化や文章の読み取り、ミスの未然予防など、次々とAIが各業界に入っていっている昨今。レガシーな領域でもAIでイノベーションが起きています。AIにとってレガシーな業界と言えば、真っ先に第一次産業が考えられます。2017年以降、AI×北海道というテーマでAIによる第一次産業のAI活用が本格的になっています。また、農業従事者の減少や世界的な食糧不足問題などを解決するためにもAI/IoTの活用は必須ではありますが、まだまだ第一次産業にAIという話はさほど聞かないと思います。

第一次産業のAIといえば、トマトなどの野菜をAIで自動採取といったAIや、AIによる耕運機の無人走行等といった研究ベースの報告は聞きます。しかし、特定の野菜を採取することを自動化しても、導入コストや導入障壁の方がまだ高いです。

今回、そんな第一次産業で次々とAI/IoTを武器に食品流通などでイノベーションを繰り返すいずみホールディングス代表、泉卓真さんにお話をお聞きしました。

株式会社いずみホールディングス(IZUMI GROUP)

最初に、AI/IoTを武器に食品流通などでイノベーションを起こしているいずみホールディングスとは一体どんな会社なのか見ていきます。Missionに「食品流通のOSをつくり、新しいインフラで、世界中に豊かさを届ける」とあります。世界中により良い仕組みとより大きな価値を届けるために、テクノロジーを活用して食品流通を最適化するチャレンジをしています。そして、Visionとして「生産者の所得を1.5倍にして日本の食卓の食費を1/2にする」ことを掲げています。生産者にとっても消費者にとっても嬉しい話です。しかし、ここは簡単な話ではありません。

生産者の所得を1.5倍にして、日本の食卓の食費を1/2にするには単純に既存にかかっているコストを削減する方法が有力です。しかし、既存にかかっているコストはかかるべくしてかかっているため、ここを削減すること自体が難しく、今まで改善されてこなかったのです。そのため、どのようにしてここを改善していくのかが鍵になります。そこで、いずみホールディングスは流通経路の改革と収益構造の改革(Platform × Technology)が必要だと考えたそうです。次からはなぜ、流通経路と収益構造の改革が必要なのか、そこにはどんな問題を抱えているのかをみていきます。

流入経路にはどんな課題があるのか


流通の概要

生産者から我々消費者に届くまでに多くの中間業者の介入があります。介入があればあるほど流通時間とコストが増加していきます。しかし、さらに中間業者がいると顧客に対するニーズ(鮮度・価格・量など)に答えることが難しくなります。


流通改善概要

図のように、中間業者を介さずに消費者とダイレクトな構築が良さそうですね。しかしただ単純に中抜きにしたわけではありません。それでは、顧客のニーズに答えることが難しくなりますし、その負担を全て中間で行うにはあまりにも負担が大きいです。また、これは顧客のニーズに合わせて流通を最適化しなければならず、物すごく複雑になるため、簡単ではありません。

流通経路改善

そこで、いずみホールディングスはオフラインで魚、肉、野菜をお客様の規模、状況、状態、要望に合わせて流通させられる卸売として優れた仕組みをつくり、その上に生産者と消費者をつなげるプラットフォームの構築を行いました。つまり、いずみホールディングス自体をプラットフォームにし、そのプラットフォームでの取り組みの一つにネット市場があります。小売業者が仕入れをする場合、今までは市場に出向き自分の目で目利きをしていました。しかし、それが自分の今いる場所で確認ができ、ネット内で全てが完結するため、スピードが圧倒的に早く、一旦構築できてしまえば細かいニーズに答えることも可能です。それにより、今までは不可能であった水揚げされた直後の魚の状態や収穫時の野菜の状態を確認でき、今まで以上に早く商品や鮮度を確認することができる可能性があります。

実際購入が可能な市場画面

そして、収益構造の改革をするためにもAI/Iotの技術が使われていきます。

では実際にはどんなことを行ってきたのか。

各漁港の各魚種の水揚量を予測して、情報流通と販売までのスピードを上げる

当初は過去の各漁港の魚種ごとに分けた、水揚げデータや海水温などの環境データをインプットし、水揚量を高精度に予測できれば、その予測から資源保護を考えた漁業と物流の最適化ができると思いました。しかし、結論から言うとまだ予測誤差が大きくて実用にはまだ至っていないです。

そこで、漁場・漁獲予約システム→オーシャンスコープの開発を始めました。

ーオーシャンスコープ?双眼鏡?

定置網に取り付けた魚群探知機から、音響画像・漁獲魚種・数量といった膨大な情報を取得し、その情報からAIが対象とする定置網にどんな魚が入り、どれだけの水揚げができるのかを予測するシステムになります。それにより生産者は効率的に漁業を行うことができます。さらに、その情報をお客様と共有することで水揚げ前に注文ができます。これによって、いち早く資源にアプローチし、お客様へ販売する体制の構築を目指しました。それがオーシャンスコープです。

ーオーシャンスコープの精度は?

魚種判別については、手持ちのデータで検証すると90%以上の精度になりますが、未知のデータへの対応が弱く、精度はまだ50%程度です。しかし、漁業者も自分自身を50%程度と自己評価しており、AIと漁業者は同じレベルだと言えます。漁獲量については、まだ精度の評価はできていません

魚の画像を見るわけではないので魚種判別は難しそうですね。しかし、今後水温や季節など、まだまだ使用できそうなデータはあるので期待できますね。しかも、魚群探知機の情報と音響画像データなので、ある意味マルチモーダルな手法が使われていることに驚いています。また、この方法でお客様に今までよりも早く情報が提供できれば究極の鮮度ですね。確かに最初に魚に接触するのは漁師ではなく”網”ですね。このシステムの精度が上がれば、皆さんが朝の天気予報で今日は雨が降るのかどうかを確認するのと同じように、今日は「ブリの水揚げが0.8tやイカの水揚げが0.4tになることが予想されます」と事前に情報を持つことができるようになり、情報のキャッチアップから共有・購入までを早く行うことができる日がくるかもしれませんね。

FAX文化にOCRの導入

飲食店と卸業者との受発注は未だにFAX発注の場合が多いです。そのため、受発注のトランザクションデータをトラッキングすることが不可能でした。その問題をFAXの紙データをいくつかのルールのもとOCR技術により電子化することで、各飲食店・卸業者のトランザクションデータを可視化することに成功しました。これで、FAX対応が多い卸業者の受注作業の自動化や、トランザクションデータを元にしたサービスの開発にチャレンジできると思います。つまり、今までアナログであったデータをAIによってデジタル化し、必要なデータの収集ができるようになると思います。

ーAIによって大幅に精度が高くなったOCR技術が、今までの”紙”から”電子”へのデータの改変ができるようになったんですね。またトランザクションデータを分析・加工していくことでさらなるサービスへも発展しそうですね。

現在力を入れているのはワンプラットですね

oneplatはBtoBマネープラットフォームであり、すべての業種の企業が利用できる金融ソリューションです。企業(購入者)がoneplat(ワンプラット)を導入すると、各取引業者(販売者)からの請求をoneplatが15日ごとに立替えておきます。企業(購入者)は月末締め翌々月10日に後払いで一括支払いをすることが可能となりました。そうすることで、キャッシュフローが改善し、キャッシュフローの最大化を創り出すことができます。また、振込作業や振込手数料を大幅削減、主要な会計システムへのデータ取込みも可能なので管理部門の生産性も圧倒的に向上します。もちろん、各取引業者(販売者)にも大きなメリットがあり、oneplatが15日ごとに(購入者様のご登録状況・ご利用状況等によります。)支払いをするのでキャッシュフローの改善と売掛金のリスクヘッジにもつながります。例えば、食品流通業は現金取引も多く仕分けの量も膨大なのでとても相性の良い業界の一つだと考えています。現在のターゲットは比較的、大規模から中規模ぐらいの企業ですが、将来的には全国すべての法人企業を規模にかかわらず対応できるようにしたいと考えております。業種はすべての業種が対象です。

(提供:いずみホールディング)

Oneplat

メリットは以下の三点があります。

メリット

  • キャッシュフローを最大化
    月末の資金管理が楽に
  • 業務コストの削減
    振込作業・振込手数料の大幅削減
  • 会計業務の簡素化
    経理の作業時間を大幅削減

ーoneplatはキャッシュフローを創りだし、業務工数の削減を実現する仕組みを構築したことで、エンドクライアント様の効率的な企業活動に大きく貢献しているってことですね。

漁獲予測やOCRはAI企業との協業で開発しました。事業会社がAI企業とタッグを組んで課題解決に取り組んだことで、より明確な課題へブラッシュアップすることができました。そして、最終的に挑戦したい課題を定義し、解決策として「ワンプラット」が生み出されました。こちらのワンプラットは現在、国内の特許出願と併せてPCTに基づく国際出願も終えています。

ーレガシーな業界に参入する際にどんな課題が発生しましたか?

メディアの皆さんが取り上げてくださることも多くなり、たくさんの方々や企業に私達のチャレンジを知っていただける機会も増え、そして、応援してくださったことで事業規模も大きくなってきたので、現在は特に課題を感じてはいないのですが、確かに創業当初は大変でした。旧態依然の体質の企業が多いこともあり、我々の業績や伸びるスピードがなぜ早いのかビジネスモデルが理解しにくいものだったのでしょう。既得権益社に様々な妨害というか嫌がらせをされた記憶はありますね、笑える話も含めて。例えば、ある権利取得のための申請を行った際、あなた方は脅威ではなく猛威なのでその権利を行使するな、という趣旨で市場関係者から呼び出されたのですが、邪魔をされていることまでは理解できましたが、けなされているのか褒められているのかは分かりませんでした(笑)。ある時は私達にお客様を取られたという業者がオフィスに乗り込んできたり、ある時は弊社が裁判で全面敗訴したという事実無根の内容の記事が出たり、後に調べたら私達に売上を奪われた競合が、関係のあるメディアに記事作成を発注したみたいですが、私達に事実確認の取材が一切なく記事になることには驚いたのと、ドラマ仕立てのストーリーだったのは驚きました(笑)。ある時はあそこが安いのは一週間前の商品を販売しているからだと誹謗中傷をされたり、さすがに生鮮卸売で一週間前の商品というのは言い過ぎなので誰も信じていませんでしたが(笑)。この業界には当時、そんな妨害や嫌がらせをする企業もあり他にもさまざまな出来事があったと思いますが、それでも私達が業績を伸ばし続けられたのは社会やお客様は私達の応援をしてくださったからだと思います。

ー深堀りしていくとまだまだネタが出てきそうですが、事実無根の記事が出た時や誹謗中傷などの風評への対処方法はどうされたのですか?

そのようなことによる被害は特にないので特別な対応はしていません。正しい倫理観で経営をし、経営理念や経営方針をどこよりも大切にしているので、どういう会社であるかは働いているスタッフが一番よく知っているのだと思います。例えの一つとして、労働集約型と言われるこの業界であっても労働時間に法令違反が無いように、残業をしないで高いレベルで運営や運用をするために、しっかりシステムに投資をする。会社の情報は、そのような基準や要求の高さに日々触れているスタッフから、外部に正しく発信されていくと考えています。私としてはスタッフの努力とお客様からの支援により、競合に勝つことで起きる事象の一つと考えていますので特に気にしていません。競合に、商品や価格、仕組みやサービスで勝てない企業の中には一定数、その様な行動をしてしまう企業がどこの業界にも存在すると思っていますので、そういう方法しか残っていなかったのだと認識するようにしています。今後も「食品流通のOSをつくり、新しいインフラで、世界中に豊かさを届ける」ために必要な仕組みやサービスの開発や展開にチャレンジしてまいります。

ー最後は、AI導入ではなく、ビジネスを推進していく上でのリアルな衝突を垣間見た気がします。

泉卓真社長、本日は貴重なお時間頂きありがとうございました。

今後も収集されたデータからAI/IoTを活用した展開が考えられますね。第一次産業でのAIの活躍が出てくることを期待しています。

いずみホールディングスHP

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