「オリジナル」が適正な色調であるとは限らない場合、よりリアルな色調を復元することができる

この記事の原文はこちら→Battle of Okinawa

沖縄戦の白黒記録写真を AI (人工知能) でカラー化することについて、賛否両論があるかもしれません。

正確な色彩が正確に再現できるわけではない以上、それはヴァーチャルな実験に過ぎないのではないか、「加工」によって、写真の史料としての価値が失われるのではないか、という批判もあるでしょう。歴史資料をあざやかな発色でカラー化することは戦争の実相を誤ったイメージで伝えるのではないか、と躊躇する人もいます。

むろん、戦争の写真を鮮やかなパステルでカラー化してもそれは正確な色付けではありえません。今段階の自動色付けでは、爆発や火災、そして煤の色などはあまり正確には再現されないようです。写真によっては、ときどき突拍子もないカラーで色付けされることもあり、注意が必要です。

しかし、それでも、当クラブがリリースしている【シリーズ沖縄戦】において、いくつかの白黒の記録写真をカラー化しています。

モノクロの世界がカラー化されることで、人間の受容はやはり確実に変わり、活性化されます。

そのあたりは「記憶の解凍」という言葉で、その分野をパイオニア的に研究されている先生方にお任せするとして、ここでは、我々がシリーズ沖縄戦のブログ化と SNS 発信をしていくうえで、自動色付けについて、気が付いたことを少し書き留めておきたいと思います。

( 1 ) オリジナルとして保存されている写真がすべて適正な色調の状態というわけではない。

たとえば、沖縄戦を語る際に非常に重要な米軍の記録写真の一つである、1945年 3月28日の運天港攻撃の際の写真を紹介したいと思います。

日本海軍は今帰仁の運天港に特殊潜航艇基地を置いていましたが、米軍の沖縄島上陸以前には既に米軍の空爆を受け壊滅的な被害を受けています。

この時の爆撃や、その後のもろもろの作戦上の失敗を受け入れることのできない軍部は、地元の住民が米軍に情報を流しているという「スパイ説」を信じるようになります。またこうしたデマが、多くの日本軍による住民虐殺を生みました。

しかし、実際には米軍は沖縄戦以前から細かな航空写真などから基地の存在を解析しており、制作された正確な地図に従って狙って爆撃していました。

その爆撃記録となる米公文書館に残されている二枚の写真が、目が痛くなるほど真っ赤すぎたのです。

これは、赤外線か何かで撮影された特殊写真なのだろうか !? とおもうほどですが、実際に、グレースケール化 (モノクロ化) してカラー化すると、どうなるのでしょうか。

まず公文書館の写真を見てみましょう。

 

写真 ① の場合 (資料コード0000112184)

A. 公文書館のオリジナル写真

【原文】 Direct hit on submarine pen at Unten Ko, Ryukyus, by torpedo bomber of VT-83 from the USS ESSEX (CV 9) 28 March 1945.
【和訳】 米軍艦エセックス(CV-9)艦載の雷撃機(VT-83所属)の攻撃が運天港にある潜水艦待避所に命中。
撮影地: 運天港
撮影日: 1945年 3月28日

 

B. グレースケール化

 

C. AI でカラー化処理

以上、わかるように、カラー化してみると、実はこの写真が運天港の周辺の集落のすがたや、左上で攻撃されて煙を上げている個所までがかなり細かく記録している写真であるということがわかります。

これなどは、グレースケール化したうえで、カラー化することで、より細部まで明確に確認しやすくなる、わかりやすい例です。

 

写真 ➁ の場合 (資料コード0000112184)

A. オリジナル写真

【原文】 Direct hit on submarine pen at Unten Ko, Ryukyus, by torpedo bomber of VT-83 from the USS ESSEX (CV 9) 28 March 1945.
【和訳】 米軍艦エセックス(CV-9)艦載の雷撃機(VT-83所属)の攻撃が運天港にある潜水艦待避所に命中。
撮影地: 運天港
撮影日: 1945年 3月28日
資料コード: 0000112184
写真番号: 80GK-4067
アルバム名: 米海軍写真資料(カラー)

B. グレースケール化

C. AI でカラー化

 

海と陸地と森の色が表示され、海岸線がより明確になる。それだけでも随分とわかりやすい写真になっています。

しかし、いくつも戦場の写真をカラー化してみて、感じるのは、緑などは鮮やかすぎるほどに発色するが、赤く燃える火や爆弾の炎の色は、ほとんど再現されたことがないということです。

これはオリジナルの白黒写真の限界なのか、それとも今後、カラー処理の精度が上がると改善される点なのでしょうか。。

たとえば上の爆撃では、よく考えれば、爆心地の赤や黄色の炎が見えていてもおかしくないが、それはすべて真っ白に表示されてしまいます。

 

他の例も挙げてみます。

米軍によって焼き払われる民家。民家が真っ白なものに覆われているのが分かるが、赤や黄色の炎は再現されていないように思えます。


日本兵撃退およびノミ駆除のため、小禄半島近隣の家屋が焼き払われる。(1945年 6月11日撮影)Houses are burned in vicinity of Oroku Peninsula to dislodge both Nips and fleas.

小禄半島の壕をトリニトロトルエンで爆発させる。これも白い煙しか見えません。


日本兵撃退およびノミ駆除のため、小禄半島近隣の家屋が焼き払われる。(1945年 6月11日撮影)Houses are burned in vicinity of Oroku Peninsula to dislodge both Nips and fleas.

極めつけは、沖縄戦で投入された火炎放射戦車や火炎放射器の記録写真です。

これらもすべて白い煙として色彩化されています。

Flamethrower for the 6th Marine Division, plays a hot lick for the inhabitants of a cave on Okinawa.(rudeerude)

火炎放射器が、まるで噴霧器のように真っ白に再現されてしまうのです。

これらは今後さらに改善されていくのでしょうか。。

 

 写真 ➂ の場合 (資料コード0000112184)

【原文】 40mm guns aboard USS NAVADA (BB36) firing on Okinawa. March 31, 1945.
【和訳】 沖縄を砲撃する米軍艦ネバダ (BB-36)の40ミリ機関砲。
撮影日: 1945年 3月31日
資料コード: 0000112184
写真番号: 80GK-3798
アルバム名: 米海軍写真資料(カラー)

B. グレースケール化

C. AI でカラー化したうえ、色調修正

 

カラー化されると、より立体的に見えるため、細部がよくわかります。左下側におびただしい砲弾の薬きょうがみてとれます。

以上、見てきたように、AI によるカラー化はオリジナルの写真がいつも適正な色であるとは限らない場合、よりリアルな色調を復元することができるのです。

次は、時間があれば、AI が苦手な色彩をあげてみたいと思います。

例えば、先ほど少しばかり言及した、爆撃の火炎などの赤や黄色、そして沖縄の赤瓦のような色の場合です。

 

この記事の原文はこちら→Battle of Okinawa