NICT,東大 深層学習による超伝導体の予測技術

3つの要点

✔️周期表情報だけによる予測手法

✔️物質の超伝導化を62%の精度で予測

✔️データベースに未登録の新素材超伝導体CaBi2を発見

Deep Learning Model for Finding New Superconductors

written by Tomohiko Konno, Hodaka Kurokawa, Fuyuki Nabeshima, Yuki Sakishita, Ryo Ogawa, Iwao Hosako, Atsutaka Maeda

(Submitted on 21 Dec 2019)

subjects : Submitted on 3 Dec 2018 (v1), last revised 3 Nov 2019 (this version, v3)

はじめに

1911年の発見以来、世界中で高温超伝導体(高い転移温度 (Tc) で起こる超伝導体)発見のための研究が取り組まれて来ました。
何故なら、特定の物質が超伝導体になる温度(Tc 臨界温度)を予測する理論が、依然として確立されていないためです。理論的手法も計算的手法も非常に困難です(近年は少しづつだが、予測するための理論も出てきてはいる)。そのため、超伝導体を探すにあたっては、今なお専門家の勘と経験に拠る所が大きく、実験と試行錯誤を繰り返しているのが現状です。

今回紹介する論文は、超伝導体を発見する最初の深層学習モデルを紹介いたします。

判別モデル

この手法はDLに周期表を学習させることから始まります。周期表の118元素の一つを表す場合、ワンホットベクトル(1つの成分が1で残りの成分が全て0であるようなベクトルのこと)で表すことが出来ます。これにより、化合物の場合はその合成ベクトルで表現する事が出来ます。
しかしながらこの表現では、周期表から容易に予測出来る元素の特性を表現出来ません。

元素の物性を特徴付けるのは最外殻の価電子なので、この価電子軌道の違いに対応するために、周期表をsブロック、pブロック、dブロック、fブロックの4つに分割します。
こうした元素表現の次元は4×32×7となります。

深層学習モデルは、このように表現されたベクトルを入力とし、Tc(臨界温度)を出力するように学習されます。
このように、出力値によって、任意の物質が超伝導化するかどうかだけではなく、Tcまで予測する事が出来ます。
超伝導体は絶対温度0Kよりも大きいTcを持っているので、未知の物質ベクトルを入力した時に0より大きい出力値ならば、この物質は超伝導体であると予想されます。

精度検証

12700物質が記録されている超伝導体のデータベース(SuperCon)があります。
このSuperConで学習したモデルを用いて、(無機物質48000を記録した)無機材料データベース(Crystallography Open Database(COD)) のTcを予測し、COD中から超伝導体を見つけようと試みました。しかしこの試行の結果は、17000もの物質が Tc>10K になるという非現実的なものでした。この原因は、SuperConに非超伝導体は60個しかなかったためです。
超伝導体を学習するためには非超伝導体も必要なので、CODも学習データに加えます。SuperConは0Kよりも大きい臨界温度Tcを持ちますが、CODは超伝導化しないと仮定されているため、Tcは全て0に設定されています。


予測値および実際のTc値の散布図


ベースラインはランダム予測 RegとClsはregressionとclassificationの略です。

提案手法で Tc>0K の超伝導体の予測では、Precision 62% , Recall 67% の精度を出します。Tc>10Kではさらに高い結果を示します。

学習→評価の度に精度が違っていたため、精度は平均値で計測されています。
学習モデルは、非超伝導体であるはずの物質の中から、CaBi2(SuperCon中には含まれていなかった最近発見された超伝導体)を超伝導体だと判定する事が出来ました。
これらの結果は、提案手法が新しい高温超伝導体を発見出来る能力がある事を示唆しています。

まとめ

提案手法は新規性が高い取り組みであり、カバーしなかった問題が幾つも残されています。超伝導体の中には、同じ組成の異性体でTcが異なる物質がある事有機超伝導体超伝導体ファミリー等々の扱い方について考慮しなかった事です。

創薬研究等にディープラーニングによる成果が多数報告されている事が知られていますが、
今回の結果は、そのような有機化学だけではなく物性物理学においてもディープラーニングによる新素材開発の可能性を示すものです。

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